研究課題/領域番号 |
18K07491
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
池田 将樹 埼玉医科大学, 保健医療学部, 教授 (50222899)
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研究分担者 |
池田 佳生 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00282400) [辞退]
対馬 義人 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20375546) [辞退]
藤田 行雄 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (70420172) [辞退]
山崎 恒夫 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (80200658) [辞退]
笠原 浩生 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (80781898) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳アミロイドアンギオパチー / アルツハイマー病 / 脳脊髄液 / タウ / アミロイドβ / アポリポ蛋白E遺伝子 / 11C PiB-PET / 18F THK5351-PET |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)の脳脊髄液(CSF)マーカーとして、Aβ、タウ以外に、軸索障害マーカーであるNeurofilament light chain (NFL)とグリア性神経炎症マーカーであるChitinase-3 like 1 protein(YKL-40)が増加することを示し、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)の一種である脳葉微小出血(CMB)を有するAD臨床4病型(早期発症記憶障害型、後期発症型記憶障害型AD、発語減少(ロゴペニック)型AD、後部脳萎縮型AD)の4群間において、lvPPA-ADではCMBの左側偏在、CSFにてNFL高値を認め、CMB数/分布と神経軸索障害による神経変性との有意な関連を報告した(Ikeda M et al. Front Neurol 2021)。極稀少頻度であるアポリポ蛋白E遺伝子(APOE)ε2はAD発症に保護的因子とされている一方、CAAに伴う脳葉出血の高リスク因子であることが報告されている。今回、我々はアポリポ蛋白遺伝子(APOE)ホモ接合体ε2/ε2を有し、11C PiB-PET陽性、再発性脳葉出血、低アポリポ蛋白B血症、低LDLC血症、18F-THK5358 PETによるタウおよびCAA関連astrogliosisを反映する画像所見、脳生検による血管Aβ病理所見を確認したAD症例を世界で初めて発表した(Ikeda M et al. Front Neurol 2021)。さらに、次世代シーケンス(NGS)解析により、同症例が複数の脂質異常症関連遺伝子(APOB、PCSK9、LDLRAP1、MTPT1)にて複数の変異を認めるpolygenic variantsを明らかにした。APOEε2/ε2症例のCAA病理と脂質異常症関連遺伝子の変異については、今まで報告のない新しい知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ADにおいては非認知症対照群に比して、CSF中のNFL、YKL-40が有意に増加し、ADの臨床病型に関して、発語減少型ADではCSF NFLが他のAD病型より有意に上昇し、脳葉微小出血(CMB)の分布と数が軸索変性とAD病型に影響を与えることを示した(Ikeda M et al. Front Neurol 2021)。再発性脳出血を認めるAD症例において分子PET画像18F THK5358 PETにて稀少遺伝子型であるAPOEε2/ε2症例において大脳皮質のタウ集積とともに脳葉脳出血、脳表ヘモジデリン沈着(cSS)に伴うastrogliosisとワーラー変性を示す所見を得た(Ikeda M et al. Front Neurol 2021)。さらに同症例では複数の脂質異常症関連遺伝子(APOB、PCSK9、LDLRAP1、MTPT1)にて複数の変異を認めるpolygenic variantsを明らかにした(Ikeda M et al. Neurogenetics 2021)。脳葉出血、cSS、CMBのCAAを呈するAD症例群のタウ、アミロイドの病理について、現在、英文誌に投稿中である。脳葉出血、cSS、脳葉CMBを呈するAPOE遺伝子(ε2/ε4、ε3/ε4、ε4/ε4、ε3/ε3)保有AD症例において脂質異常症を認めており、次世代シーケンス遺伝子解析(NGS)にてAPOE遺伝子多型と脂質異常症関連遺伝子を解析し、CAA、タウ病理との関連をさらに多数症例にて検討する。
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今後の研究の推進方策 |
超高齢社会である本邦において、ADおよびCAAの頻度は今後も高まるものと想定される。ADさらにCAAによる認知機能障害の病態解明と防止策は緊急の課題である。MRI脳画像にて脳葉出血、脳表ヘモジデリン沈着(cSS)、微小出血(CMB)を呈し、APOE遺伝子(ε2/ε4、ε3/ε4、ε4/ε4、ε3/ε3)を保有するAD-CAA症例群において血清脂質異常を認めており、APOE遺伝子多型と脂質異常症関連遺伝子を解析し、CSFマーカー分析を行い、(脳血管および脳実質)アミロイドβ、タウ病理と軸索障害神経変性、グリア性神経炎症の関連をさらに検討する。ADおよびCAAの病態解明を進めることで治療法の開発につながり、また、ケアのあり方を改善することで、高齢認知症者の生活の質(QOL)の維持・向上に結び付けたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染により、予定された実験が行えず、試薬の購入がされなかったため、次年度使用額が生じた。今年度は実験を行うため、試薬購入に使用する。
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