研究実績の概要 |
本研究の目的は、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)患者の、骨格筋内クレアチン取り込みを促進することによる病態改善をめざした新規治療法開発である。平成30年度では、クレアチントランスポーターSLC6A8を標的とした化合物スクリーニング(名古屋大学創薬科学研究所および第一三共株式会社TaNeDSプログラム)を行い、SLC6A8の転写活性および蛋白質発現を上昇させる化合物を同定した。 平成31年度(令和1年度)では、SBMA患者のfibroblastを用いたviability改善効果や過去の薬理試験結果等から、最終的に3化合物(T8, T38, T40)について、SBMAマウスモデル(AR-97Q)を用いて検討を行った。薬理試験の結果を参考にして各化合物について2段階の投与量を設定し、週5回投与を行った上で骨格筋SLC6A8のmRNA量を測定したところ、1mg/kg/dayのT38を投与した際にmRNA量の上昇をみとめたため、T38(1mg/kg/day)の長期投与を行った。T38のゾンデによる強制経口投与を6週齢から一日一回、週に5日間行い、体重、握力、ロタロッド試験による運動機能評価を行った。T38投与による運動機能改善の程度は限定的であり、投与量を増量して評価を実施した。T38は血糖低下作用を有するため、2mg/kg/day と5mg/kg/dayの各群で空腹時血糖と薬剤投与2時間後の血糖を測定した。5mg/kg/dayの投与群では半数のマウスで低血糖を認めたため運動解析を中止した。2mg/kg/day投与にて運動機能評価を実施した結果したところ、1mg/kg/dayの投与群と同様に効果は限定的であった。T38によるSBMAマウスモデルの神経変性抑制効果は限定的であり、かつ低血糖の副作用を有するため高用量を投与することも難しいことから臨床応用は困難であると判断した。
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