研究課題/領域番号 |
18K07501
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松瀬 大 九州大学, 医学研究院, 助教 (70596395)
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研究分担者 |
山口 浩雄 九州大学, 大学病院, 特任講師 (00701830)
雑賀 徹 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (00744880) [辞退]
山崎 亮 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10467946)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多系統萎縮症 / αシヌクレイン / オリゴデンドログリア / 脱髄 / ミクログリア / CSF1R阻害薬 |
研究実績の概要 |
Tet-off システムを用い、オリゴデンドログリアにおけるヒト変異αシヌクレイン(αSyn)を、任意の時期に発現/抑制が可能となる多系統萎縮症モデルマウスを作成。8週齢以降にαSyn発現させると、平均22週齢で発症し、症状は失調歩行のほか、尾や後肢の麻痺、寡動などであった。発症後徐々に症状進行し、体重減少やrotarod scoreの悪化がみられた。病理学的所見ではαSynの沈着や脱髄所見が大脳、小脳、脳幹、脊髄にみられ、それに伴いarginase-1陽性ミクログリアの顕著な浸潤やアストロサイトのコネキシン43/30の広汎な脱落を認めた。マイクロアレイにて遺伝子発現を解析したところ、炎症や免疫に関する遺伝子群の発現が上昇している傾向が示唆された。 発症直後の23週齢でαSynの発現を抑制すると、マウスの症状は改善傾向を認め、体重やrotarod scoreもコントロール群と同等に回復した。しかしながら、発症約5週後の27週齢でαSynの発現を抑制した場合は、症状の悪化は停止するものの、回復は部分的にとどまった。この結果から、本マウスでの治療介入時期は23週齢が適切と判断し、活性化ミクログリアを標的とした治療法開発を試みることとした。23週齢からCSF1R阻害薬を1-2週間連日経口投与させると、arginase-1陽性活性化ミクログリアが50%以上除去できることを病理学的に確認できた。現在長期投与による神経症状の変化について評価を進めている。 一方、髄鞘形成期(3週齢)からαSynを発現させると、運動麻痺が約70%と高い頻度でみられ、病理学的に大脳や脳幹で卵円形や線形など局所的なp-αSyn沈着、arginase-1陽性ミクログリア、Cx43/Cx30脱落を認め、その一部に局所的な脱髄斑が観察された。これらより、髄鞘形成後に発現させたモデルとの違いが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗ミクログリア治療薬については、当初考えていたイグラチモドよりもCSF1R阻害薬が有用と考え、投与実験を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
CSF1R阻害薬の長期投与実験を進めていく。他の候補薬剤についても検討する。αSynの発現開始時期の違いによるモデル動物の表現型の違いについても解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の使用状況としてはおおむね予定通りであったが、少額の残金が生じたため、次年度の使用額とした。
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