研究実績の概要 |
これまでの研究からp62のALS変異(P392L, G425R)はストレス条件下ではKeap1結合ドメインやLC3結合ドメインで切断を受けることを明らかにしてきた。この切断によりユビキチン化タンパク質との結合に影響を及ぼすのかを免疫沈降法で解析した。WTまたはG425Rを発現する細胞を亜ヒ酸で処理した後、細胞抽出液を抗p62抗体で免疫沈降を行った。そして、そのサンプルを抗ポリユビキチン抗体によるウエスタンブロットで解析した。その結果WTは多くのユビキチン化タンパク質と結合していたが、G425Rはその結合が減少していた。このことから、ストレスによる切断によりオートファジーレセプターとしての機能も低下していることが示唆された。 ALS変異p62を切断するプロテアーゼを同定するためにBioID法を利用した。昨年度MACタグの付いたコンストラクトを作製し、この融合タンパク質がインタクトなp62と同様に切断されるかを確認した。MAC-p62-G392Lを発現する細胞を亜ヒ酸で処理し、ウエスタンブロットでp62の切断を解析したが、融合タンパク質では切断が生じなかった。N末端のMACタグによる構造変化によるものと考えられ、プロテアーゼの相互作用に変化が生じBioIDによる同定が不可能になってしまった。一方、HSF1阻害剤KRIBB11処理により変異p62の切断が抑制できたことから、このプロテアーゼはストレス依存的に発現誘導を受けることが明らかになった。 次に、これらの細胞におけるTDP43のストレス顆粒への蓄積を免疫染色で確かめた。亜ヒ酸処理した後、細胞を固定し抗TDP43抗体で染色した。WTおよび変異p62細胞において、非ストレス下ではTDP43は核に局在していたが、酸化ストレス下ではストレス顆粒に一部のTDP43が蓄積していた。従ってp62の変異に関わらずTDP43の動態は同じであった。
|