研究課題
本研究はアミロイドβ(Aβ)の排出経路について動物モデルを用いて研究した。実際の病態においては脳内のニューロンでAβは産生され、一定量のAβが血管周囲腔glymphatic系を伝わって脳表に排出されると考えられるが、本研究では脳表に投与したAβの動態を観察した。Tie2-GFPマウスの脳表に滴下した100μM のAβ(HiLyte647-Amyloid β1-42 (AnaSpec, Inc.) )はPEGにて溶解すると、皮質動脈周囲に移動、さらに穿通動脈を取り囲むアストロサイトのendfootを伝播することが初めて観察された。血管周囲のアストロサイトに取り込まれたAβはさらに深さ150μmの毛細血管周囲アストロサイトのendfootまでsyncytiumを介して伝播し、最終的には実質内のアストロサイトに移動することが確認された。一方、溶液を作成後に37度で数時間インキュベートしたfibril Aβは、glymphatic系を介して脳表から50、100、 150μmさらに最深で200μmへと次第に移動していくのが観察された。時間は30分後には50μmに到達し、60、90分とさらに脳内深部に到達していく様子を確認した。このfibril Aβの移動は、同時に投与したdextranとほぼ同じ場所を移動しており、血管周囲の対流convective flowに乗って移動していると推測された。これに対して溶液作成直後のmonomer Aβは脳実質をそのまま拡散していき、glymphatic系を介しての移動はほとんど認めなかった。このように本研究では、Aβの運搬が、溶解条件、重合度の度合いなどで異なった経路を介することが示唆された。今後の治療法の開発に役立つと考えられる。
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