αシヌクレインを削減するエキソソームの生成過程の解明と新規PD治療法開発

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 18K07510
• 研究機関: 順天堂大学
• 研究代表者: 常深 泰司 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50401344)
• 研究分担者: 赤松 和土 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60338184)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: パーキンソン病 / アルファシヌクレイン / エキソソーム / ATP13A2 / Lewy小体

研究実績の概要

エキソソームがαシヌクレインの脳内伝播に果たす役割を解明するために、エキソソームの産生に重要な役割を果たしているエンドライソゾームタンパク質であるATP13A2のノックアウトマウスとレンチウイルスを用いた過剰発現系を用いた。
正常マウスとATP13A2のノックアウトマウスの線状体に繊維化αシヌクレイン（PFF）を注入し、3ヶ月後にLewy小体様病理をリン酸化αシヌクレイン抗体p-Syn64で観察したところ2グループ間で違いはなかった。
次にレンチウイルスを用いたATP13A2の過剰発現では、局所のLewy小体様病理は悪化したが遠隔部位の病理はむしろ軽減した。この局所の悪化を検討するためにPFF注入後、1、3、6時間、1日、1週間、3週間後のPFFの取り込みを抗αシヌクレイン抗体、Syn211で検討した。その結果、PFFはマイクログリア、アストロサイトにまず取り込まれ、その後神経細胞に蓄積した。次にp-Syn64で観察したところ、リン酸化αシヌクレインはグリア細胞には出現せず、神経のみに経時的に蓄積することを観察した。この結果はLewy小体様病理の形成には時間がかかることを示し、PFFがまずマイクログリアやアストロサイトに取り込まれることが必要である可能性を示唆している。
アストロサイトのエキソソームとPFFの分泌能を検討するためにiPS細胞から分化したアストロサイトのエキソソームとPFFの分泌を検討したところ、アストロサイトは神経細胞よりエキソソームとPFFの分泌が多いこと、一旦取り込まれたPFFをアストロサイトはエキソソームを介して大量に放出することを見出した。以上の結果はPFFはまずグリア細胞に取り込まれるが、グリア細胞からエキソソームで放出され、神経細胞に取り込まれ蓄積しLewy小体様病理を形成することを示唆し、グリア細胞が治療ターゲットとなる可能性を示唆した。

研究成果

• [雑誌論文] Astrocytes Protect Human Dopaminergic Neurons from α-Synuclein Accumulation and Propagation (2020)
  • 著者名/発表者名: Taiji Tsunemi, Yuta Ishiguro, Asako Yoroisaka, Clarissa Valdez, Kengo Miyamoto, Keiichi Ishikawa, Shinji Saiki, Wado Akamatsu, Nobutaka Hattori, Dimitri Krainc
  • 雑誌名: Journal of Neuroscience 巻: 40 ページ: 8618-8628
  • DOI: 10.1523/JNEUROSCI.0954-20.2020
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Shared Metabolic Profile of Caffeine in Parkinsonian Disorders (2020)
  • 著者名/発表者名: Takeshige-Amano H, Saiki S, Fujimaki M, Ueno S, Li Y, Hatano T, Ishikawa K, Oji Y, Okuzumi A, Tsunemi T, Daida K, Ishiguro Y, Imamichi Y, Nanmo H, Nojiri S, Funayama M and Hattori N
  • 雑誌名: Movement Disorders 巻: 35 ページ: 1438-1447
  • DOI: 10.1002/mds.28068
  • 査読あり
• [雑誌論文] Variants in saposin D domain of prosaposin gene linked to Parkinson’s disease. (2020)
  • 著者名/発表者名: Oji Y, Hatano T, Ueno S, Funayama M, Ishikawa K, Okuzumi A, Noda S, Sato S, Satake, W Toda T, Li Y, Hino-Takai T, Kakuta S, Tsunemi T, Yoshino H, Nishioka K,1 Tatsuya Hattori, Mizutani Y, TMutoh T, Yokochi F,Ichinose Y, 5名略 , Farrer MJ, Uchiyama Y, Akamatsu W, Y Wu, Matsuda J and Hattori N.
  • 雑誌名: Brain 巻: 143 ページ: 1190-1205
  • DOI: 10.1093/brain/awaa064
  • 査読あり / 国際共著
• [学会発表] Protective role of astrocytes on α-synuclein accumulation and propagation (2020)
  • 著者名/発表者名: Taiji Tsunemi, Yuta Ishiguro, Asako Yoroisaka, Dimitri Krainc, Nobutaka Hattori
  • 学会等名: International Congress, Movement Disorder Society
  • 国際学会
• [学会発表] The exosomal a-syn filaments can be a novel biomarker of Parkinson’s disease (2020)
  • 著者名/発表者名: Yuta Ishiguro, Taiji Tsunemi, Asako Yoroisaka, Nobutaka Hattori
  • 学会等名: International Congress, Movement Disorder Society
  • 国際学会
• [学会発表] ATP13A2/PARK9 protects brains from α-synuclein propagation (2020)
  • 著者名/発表者名: T. Tsunemi, Y. Ishiguro, A. Yoroisaka, A. Okuzumi, N. Nukina and N. Hattori
  • 学会等名: 第61回日本精神神経学会総会
  • 国際学会
• [学会発表] The a-syn filaments in exosomes are useful biomarker for Parkinson’s disease (2020)
  • 著者名/発表者名: Yuta Ishiguro, Taiji Tsunemi, Asako Yoroisaka, Nobutaka Hattori
  • 学会等名: 第61回日本精神神経学会総会
  • 国際学会