研究実績の概要 |
一般高齢者におけるレム睡眠行動障害(RBD)の有病率ならびにその転帰を調査するため、新潟県湯沢町において大規模高齢者調査を実施した。2500名を対象に文書にてスクリーニングを行い、その後、電話と対面での症状聴取ならびに終夜ポリグラフィ検査による確定診断を行った。有効回答が得られた1464名のうち、18名(男性12名、女性6名、男女比2:1)がRBDと診断され、本邦の一般高齢者における有病率は1.23%であった。うち10名が診断カットオフ未満のREM sleep without atoniaを呈するprovisionally diagnosed RBDであった。本研究成果は"Prevalence and clinical characteristics of REM sleep behavior disorder in Japanese elderly people"として国際誌SLEEPで発表した(SLEEPJ, 2020,doi: 10.1093/sleep/zsaa024)。対面での症状聴取ならびに終夜ポリグラフィ検査による確定診断を行った三段階調査としては、アジア各国からの既報による有病率と大きく差はなかった。RBDの臨床患者にみられる男女比は8:2程度と男性優位の疾患であるが、本研究によって一般高齢者においては男女比2:1と女性の割合は臨床例に比して高く、受診動機のある患者に比して一般高齢者には女性RBD例が潜在していることが明らかになった。これらの成果は第3回Asian Society of Sleep Medicine学術集会のシンポジウムにおいて報告した。その後、2023年に、2018年の調査でRBDの確定診断がついた患者のフォローアップ検査を実施した。フォローアップ検査を実施できた患者10名のうち、1名がパーキンソン病に移行しており、2名が運動症状を呈していた。また、著明な認知機能低下は3名で認めた。一般高齢者から抽出されたRBD例におけるPD(確定・疑い)への進展率は6年間で30%あった。
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