研究課題/領域番号 |
18K07514
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
葛原 茂樹 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (70111383)
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研究分担者 |
三室 マヤ 愛知医科大学, 付置研究所, 助教 (20387814)
小久保 康昌 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 招へい教授 (60263000)
佐々木 良元 三重大学, 医学部, 教授 (60303723)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / パーキンソン・認知症複合 / 家族性発症 / タウオパチー / TDP-43プロテイノパチー / α-シヌクレイノパチー / 疫学研究 |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とパーキンソン・認知症複合(PDC)の剖検による診断確定例を中心にして発症者を結ぶ家系図を完成した。これによれば、我々が把握しているH地区の剖検例の出身家系の間には数世代にわたって複雑な婚姻関係があることが分かった。従って、各家系の発端者は同一あるいは極めて少数である可能性が疑われた。従って、各家系の臨床的・病理的特徴は共通の所見が得られる可能性が高い。 これらの点を明らかにする目的で、今年度はこの家系図に沿って、剖検例に繋がる発症者のクラスターごとに比較的小規模な家系図を作成し、それに連なる発症者の臨床像と病理所見を解析した。病理学的には、ALSとPDCには共通点が多く、タウオパチー、TDP-43プロテイノパチーを基盤に、α-シヌクレイノパチーが絡んだ中枢神経系の「multiple proteinopathy」と定義された。これらの中で臨床病理学的所見の解析が完成した家系から順に論文化している。最終的にはこれらの家系を家系図に沿って繋げることにより、H地区の家族性発症例の臨床的病理学的特徴を明らかにできると期待している。 これと並行して、これまで集積した剖検例と臨床例の病像と発生頻度を解析し、その結果を国際学会(国際ALS/MND学会)で発表した。1960年から2010年までのH地区のALS発生率は急激に減少していること、PDCは調査を開始した1980-90年代に高発生率であったが、その後は漸減傾向にあることを報告し、多発地グアムの発生率の推移と共通点が多く、「西太平洋のALS集積地の発生率推移」として大きな注目を集めた。この内容は現在、論文化が進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家系図作成、個々の症例の解析、家系ごとの発症者検討は、数家系については終了した。これらを論文化して国際誌に投稿することが目標であり、解析が終了した家系ごとに、論文執筆に取り掛かっている。 国際学会で発表したALSとPDCの発生率の疫学的研究については、データを補強して現在、論文を執筆中である。 どちらも、今年度中の投稿と採択を目指している。 なお、神経病理学的解析担当の分担研究者が、令和2年4月1日から所属変更になったので、病理標本へのアクセスが悪くなる可能性がある。支障が起こらないような対策を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
剖検による神経病理学的診断確定例を起点に、それに繋がる運動ニューロン疾患、パーキンソニズム、認知症の発症例を集積することにより、多彩な臨床症状・臨床病型が単一の疾患単位の臨床表現型の違いか、複数疾患の複合症状であるかを解明し、紀伊ALS/PDCの本態に迫ることが期待できる。 一方、ALSとPDCの1960-2010年の50年間にわたる発生率の推移を明らかした疫学研究と歴史的・社会経済学的背景を対比することにより、ALS/PDCの多発と激減・消滅という推移に影響を与えた因子を明らかにしていきたい。 グアムと紀伊において多発し、その後に自然消滅しつつあるALS/PDCという地域集積性のある特異な疾患をモデルの研究を通じて、ALS/PDCと共通の病態を有する原因不明の神経変性疾患であるタウオパチー、TDP-43プロテイノパチー、α-シヌクレイノパチーの原因解明と治療法・予防法の解明の糸口を見出す研究に発展させていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者と分担研究者2名の執行率はほぼ100%であったが、分担研究者1名のの分担金(旅費と消耗品)が未執行であったために、次年度使用額が生じた。この分担研究者の分担研究遂行と分担金使用は、令和2年度には完遂できる見込みである。
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