DM1ではDMPK遺伝子の異常なCTGリピート伸張とそれによる選択的スプライシングの異常が病因として知られている。研究代表者らは小脳では脳の他部位に比べてCTGリピート伸長、スプライシング異常の程度が小さいことを見出した。本研究では、脳の各部位、各細胞層におけるスプライシングの程度を調べた。 ヒト剖検脳の各部位(前頭葉、側頭葉、海馬、小脳)のそれぞれの部位からRNAを抽出し、cDNAに逆転写した。スプライシング部位を増幅するためのプライマーを作成し、PCRで増幅し、電気泳動を行って、スプライシングアイソフォームの割合を算出した。多くの部位で本疾患患者脳からのRNAはスプライシング異常を示したが、小脳では認められなかった。また前頭葉の皮質、白質からRNAを抽出し、同様の解析を行った。皮質、白質の分離については脳組織をスライスし、スライドグラスに貼り付け、スライドガラス上で切り分けた。分離が適切であるかどうかについては、白質/皮質でそれぞれ多く発現しているMOG/NEFHという遺伝子の発現量を定量的PCRでみることで確認した。その結果、白質ではスプライシング異常が起こりにくいことを見出した。 本症では、画像的には白質の変化が主体であるが、スプライシング異常は皮質で多くみられた。神経細胞体で起こっているスプライシング異常の結果として白質障害が起こっている可能性を想定している。別の可能性としては今までは皮質を中心としてスプライシング異常の研究がなされてきたため、皮質でみられるスプライシング異常のみが見つけられてきたことも考えられる。今後は白質で特異的にみられるスプライシング異常がないかについても検討する予定である。 以上の成果をPLOS ONEに発表した。
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