研究課題/領域番号 |
18K07517
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
関谷 倫子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 研究員 (40367412)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / ショウジョウバエ / グリア細胞 |
研究実績の概要 |
本年度は,グリア細胞に発現する遺伝子群を効率よく検索するための,新規アルツマイマー病モデルショウジョウバエの作製を行なった。 最初に,アルツハイマー病の引き金となるアミロイドβペプチドをショウジョウバエの脳に発現させ,アミロイドβペプチドの発現量を確認後,運動機能と生存率の測定を行なった。アミロイドβペプチドの発現量は,いくつかのドライバー系統(発現する神経細胞種を検討)を用い,最も効率よく発現の見られる系統を選択した。また,既存のアルツハイマー病モデルとの違いを確認するために,培養細胞を用い,アミロイドβペプチドが細胞外に効率よく分泌されているかどうかの検討も行なった。さらに,免疫染色,凝集タンパクの染色等を行い,ショウジョウバエ脳内のアミロイドβペプチドの分布,アミロイド斑の有無についても検討を行なった。結果として,アミロイドβペプチドの発現等,システムがきちんと働いていることは確認できたが,著しい表現系は現れなかった。しかしながら,発症メカニズムに関与する遺伝子のスクリーニングに用いる系であることを考慮すると,妥当な結果であると考えられた。 以上の結果を確認した後に,神経細胞でアミロイドβペプチドを発現し,グリア細胞で任意の遺伝子をノックダウンすることができるよう,GAL4/UASシステムとLexAシステムを併せ持つトリプルトランスジェニックショウジョウバエを作製した。現在,このトリプルトランスジェニックショウジョウバエとRNAi系統を交配し,グリア細胞でのノックダウンがきちんと認められるかどうかを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は,ショウジョウバエ飼育施設のトラブルにより,実験がやや遅れている。しかしながら,すでにトラブルは解消ずみであり,飼育施設のクリーン化も終了している。現在は遅れを取り戻すべく,実験を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に終了しなかったトリプルトランスジェニックショウジョウバエの確立を継続し,同時に,来年度からスタートする予定であったスクリーニングの準備を行う。 2019年度は,新規アルツハイマー病モデルショウジョウバエを用いたグリア遺伝子のスクリーニングを開始する。まず,作製した新規モデルショウジョウバエが,グリア遺伝子のスクリーニングに効果的かどうかを確認するため,ADリスク遺伝子のショウジョウバエ相同遺伝子のノックダウンにより,顕著な表現系が現れるかどうかを確認する。その準備として,リスク遺伝子のショウジョウバエ相同遺伝子のリストアップ,RNAi系統の収集,またヒト遺伝子の過剰発現系がある場合は,それらについても収集を行う。トリプルトランスジェニックショウジョウバエの確立が終了し次第スクリーニングを開始し,顕著な表現系がでるかどうか,その後のスクリーニングに向けて,どの表現系をリードアウトにすべきかを検討する。 さらに,AD患者脳より得られたトランスクリプトームを利用したネットワーク解析(共同研究)から,スクリーニングに供する遺伝子群の絞り込みを開始,系統の収集を行う。可能であれば,これらについてのスクリーニングを開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,ショウジョウバエ飼育施設のトラブルが生じたため,ショウジョウバエの飼育費用,作製費用,分譲費用,また実験にかかる費用について予定以上の残額が生じた。すでにトラブルは解消されているため,実験は遂行中であり,遅れている分は次年度に持ち越した実験のために必要である。 また,さらに効率的に実験を推進するため,2019年度には,機器の購入,人件費としての使用を予定している。
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