本年度は,作製したGAL4/UASシステム(グリア細胞にて任意の遺伝子をノックダウン)とLexAシステム(神経細胞からアミロイドβペプチド分泌)を併せ持つトリプルトランスジェニックショウジョウバエでのスクリーニングを継続した。これまでに報告されているアルツハイマー病のリスク遺伝子のうち,グリア細胞での発現が報告されている遺伝子のショウジョウバエホモログ遺伝子についてのスクリーニングは終了したが,いずれの遺伝子のノックダウンも神経細胞外に分泌されたアミロイドβペプチドの量を大きく変化させることはなかった。そこで次に,報告されているRNAシーケンスの情報を基に,老化により発現が変動するグリア細胞の遺伝子,神経損傷により発現が変動するグリア細胞の遺伝子を抽出しスクリーニングを行なった。また,ヒトでのアストロサイト,オリゴデンドロサイト,ミクログリア,血液脳関門の働きを担うショウジョウバエグリアサブタイプに特異的な遺伝子についてもスクリーニングを行なった。その結果,劇的にアミロイドβペプチドの量を変化させる遺伝子は無かったが,変化を示す可能性のある遺伝子がいくつか見つかった。グリア機能に重要な役割を持つ遺伝子については,ノックダウンによりショウジョウバエの発達段階に影響を及ぼし現行のシステムではスクリーニングを行うことが出来なかった。これらの遺伝子については,また別のシステムでのスクリーンが必要である。今後,今回見つかった候補遺伝子についての詳細な解析を進めるとともに,マウスモデルへの外挿と培養細胞での実験を考えることで,今回の結果をアルツハイマー病発症機序の解明へとつなげたい。
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