独自開発した広流路マイクロ流体デバイスを用いたヒトiPS細胞由来運動ニューロンの軸索束(神経オルガノイド)作成により軸索のみの高収量回収が可能となり、ALSの軸索特異的・運動ニューロン選択的な細胞障害の機序が明らかにできる。ALSの運動ニューロン脆弱性の分子機構を明らかにすることが目的である。 EBioMedicine誌に神経オルガノイド培養の軸索部分から抽出したRNAシークエンス解析により見出したFUS変異病態に関連する遺伝子Fos-Bについて2019年に報告した。FUS変異iPS細胞由来運動ニューロンの軸索形態異常がFos-Bのノックダウンで改善することを確認し、さらにゼブラフィッシュでの過剰発現により軸索形態異常が生体内でも再現できること、剖検脊髄でのFos-Bの発現上昇も確認した。神経オルガノイド培養を用いた軸索病態の解析はALS病態解明のアプローチ方法として有用であることを明らかにした。 さらにこの論文をベースとして、軸索のオミックス解析に関する総説を書き、2020年にFrontiers in Neuroscience誌に掲載された。 2021年にはALSの原因遺伝子であるTARDBPの変異iPS細胞を用いて同様な手法によりPhox2Bの発現が低下していることを見出した。この成果はStem Cell Reports誌に受理された。 軸索の耐久性(レジリエンス)の基盤となる恒常性維持機構について、今後も検討を重ねていく。
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