研究実績の概要 |
本研究課題の核心をなす学術的「問い」は、可塑性異常がその症状発現の中心にあるという仮説のもと、パーキンソン病(PD)の磁気刺激治療効果は可塑性異常の改善によるのか?である。もし可塑性異常の改善が、磁気刺激治療の基本的な機序であるならば、個々の患者において可塑性を指標に最も効果的な刺激・治療法の選択か可能になるのではないかと考えて研究を行った。 平成30年度はPD患者における可塑性異常の有無についての基礎的検討を行った。具体的には補足運動野の刺激頻度別の効果をまず健康成人で検討し従来よりも強力な可塑性誘導効果を示すとされるQPSではQPS50において運動野の可塑性抑圧が誘導されることを示した。また運動野への長期抑圧可塑性誘導が運動学習を阻害することを明らかにした(Sasaki et al., Brain Stimul, 2018)。更にプロトコールの詳細条件設定に関する検討も行い、刺激強度をむしろ弱めたほうが期待される効果が得られやすいことを 明らかにした(Sasaki et al., Brain Stimul, 2018)。 令和元年度および令和2年度はパーキンソン病における磁気刺激効果が本当に行動指標へ影響し得るかという検討を行うため、実臨床で頻用されている運動症状スケール(UPDRS)のうち、手と腕の運動について3Dモーションキャプチャーを用いて定量的に解析ができる測定系を確立した。従来報告ではPDでは振幅の減衰が認められるとされるが、我々の検討では減衰は認めなかった。今後は補足運動野に対する磁気刺激がこのような反復運動へどのような黄河があるのかを検討していく。
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