研究課題/領域番号 |
18K07523
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
橋詰 淳 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (00637689)
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研究分担者 |
勝野 雅央 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50402566)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リュープロレリン酢酸塩 / 球脊髄性筋萎縮症 / real-world data / 疾患修飾薬 / long-term effect |
研究実績の概要 |
本研究において解明すべき「問い」は、神経変性疾患に対する疾患修飾療法(Disease-modifying therapy: DMT)の有効性が最も得られる患者層は何であるのか、であり、特に神経変性は進んでいるものの神経症状がわずかにしか出現していないprodromal(前駆)期の患者に対する有効性を明らかにする事が最も重要な目的である。名古屋大学神経内科が中心となり推進してきた医師主導治験の結果に基づいて、リュープロレリン酢酸塩(本薬)に「球脊髄性筋萎縮症(SBMA)の進行抑制」の効能が追加された。多くの神経変性疾患では、神経症状が顕在化する10年以上前からニューロン変性が進行することが明らかとなっており、未だ臨床的症状が明確になってはいない、いわゆるprodromal期にDMTを開始することがより適切であるとの議論が盛んになりつつある。そこで本研究では、現在までに進行したSBMA臨床研究を統合する新たな患者レジストリを確立し、それに登録された患者のうち、prodromal期のSBMA患者を対象として、リュープロレリン酢酸塩投与前後の運動機能変化、バイオマーカー変化を比較検討し、本薬長期投与時の効果を評価することを目的とする。 名古屋大学神経内科では既に、目的が異なる複数の臨床観察研究を実施してきた。本研究では第一に、これらの臨床研究の臨床データを二次的に利用可能とする臨床研究を立案し、名古屋大学医学部生命倫理申請委員会からの承認を得た。さらに、これら複数の臨床観察結果も統合できるレジストリシステムを構築し、そこへのデータ格納を開始している。既存データを格納したうえで、引き続きデータ収集を継続することにより、上記目的を達する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
名古屋大学神経内科では、2006年から球脊髄性筋萎縮症(SBMA)に対する医師主導治験を、治験調整事務局を置く中心的な分担施設として実施してきた。SBMAは、本邦での罹患患者数が約2,000名程度と考えられている稀少疾患であるが、名古屋大学医学部附属病院に約200名程度が定期的に通院する等しており、その患者等を対象に、目的が異なる複数の臨床観察研究を実施してきた。本研究では第一に、これらの臨床研究の臨床データを二次的に利用可能とする臨床研究を立案し、名古屋大学医学部生命倫理申請委員会からの承認を得、さらに、これら複数の臨床観察結果も統合できるレジストリシステムを構築し、そこへのデータ格納を開始している。新たなレジストリシステムには、NU-Medの「電子連絡帳」を活用し、5つの異なった臨床研究におけるデータベース構造を変換し、1つの共通のデータベースとして格納するシステムを確立した。 既存データを格納したうえで、引き続きデータ収集を継続することにより、上記目的を達する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
先述したように、2017年8月にリュープロレリン酢酸塩が「球脊髄性筋萎縮症の進行抑制」を効能として薬事承認を受けている。承認条件として、リュープロレリン酢酸塩を使用するすべての患者に対して、有効性・安全性の評価を実施することが付されており、現在多くのSBMA患者が当学大学病院等にて治療を受けている。リュープロレリン酢酸塩の実臨床下での有用性を検討し、特に有用と考えられる患者層を同定することは、本剤を使用する患者においてもその重要は認識されており、本研究への参加を妨げる状況にない。 横断的検討については、本研究について当学関連病院も含めて広く周知しより多くの登録を進めていく。また、本剤の製造販売を担っている武田薬品工業が承認条件として付されている市販後の有効性・安全性の検討は、あくまでもリュープロレリン酢酸塩使用後の状況を調査するものであるのに対して、本研究のデータベースは、当該患者が本剤を使用する前から蓄積されているものである。同一被験者に対しても引き続き積極的にデータ収集を行い、より多くの縦断的データを蓄積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度でデータ入力者雇用を予定していたが、入力は研究協力者で行うことができ、予定していたメタボローム解析は、共同研究者からデータを得ることができたため、この経費を用いバイオマーカー用試薬に充当し、研究を進める。
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