研究課題/領域番号 |
18K07526
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
清水 文崇 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (90535254)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血液脳関門 / 血液神経関門 / 自己免疫性神経疾患 / 新規抗体製剤開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,臨床的に血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)/血液神経関門(blood-nerve barrier: BNB)破綻が発症・増悪の契機となることが明らかな自己免疫性神経疾患患者検体から,BBB/BNBを破綻させる自己抗体の新規標的分子を同定し BBB/BNBを人為的に操作しうる画期的な新規モノクローナル抗体を開発することである.これまでに我々は世界に先駆けてヒト由来のBBB/BNBを構成する内皮細胞とペリサイトの温度感受性条件的不死化細胞株を複数樹立した (J Cell Physiol 2008, 2010, 2011).平成30年度は,約300検体以上の急性期および安定期の視神経脊髄炎,多発性硬化症,ギラン・バレー症候群,慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー患者血清からIgGを精製し,BBB/BNB構成血管内皮細胞に作用させ,NF-κB/ICAM-1免疫染色によるハイコンテントイメージングシステムを用いてBBB/BNB構成血管内皮細胞に生物学的活性をもたらす患者IgGを複数同定した.特に小脳失調を伴うランバート・イートン筋無力症患者血清由来のIgGがBBB血管内皮細胞のNF-κB核内移行を促進させ,ICAM-1の発現を増加させ,強い生物学的活性があること,tight junction関連蛋白であるclaudin-5の蛋白量と10kDa-dextran/130kDa-dextran透過性が低下することを明らかとした.更に,同定されたIgGとBBB/BNB構成血管内皮細胞を用いてプロテオーム解析をし,これらのIgGに対する新規免疫標的分子を同定する同定されたIgGとBBB/BNB構成血管内皮細胞を用いてプロテオーム解析をし,これらのIgGに対する新規免疫標的分子を同定するアッセイを確立した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は,ハイコンテントイメージングシステムにより同定されたBBB構成内皮細胞に影響を及ぼす患者IgGが結合するBBB構成内皮細胞に発現する標的分子の同定を試みた.患者IgGとBBB/BNB構成血管内皮細胞を用いてプロテオーム解析をし,これらのIgGに対する新規免疫標的分子を同定する同定されたIgGとBBB/BNB構成血管内皮細胞を用いてプロテオーム解析をし,これらのIgGに対する新規免疫標的分子を同定するアッセイの確立を試みた.ディッシュ上で生細胞に患者IgGを結合させ,クロスリンカーで固定させた後に蛋白を抽出しプロテインA/Gカラムを用いてIgGと結合した抗原を単離し,得られた抗原蛋白を2次元電気泳動,質量分析法により同定するアッセイ系を確立した.このアッセイにより複数のBBB破綻に関与する自己抗体の標的分子を同定した.更に,患者IgGから新規標的分子に対する自己抗体を除去し,その生物学的活性が低下するかを検討する研究を進めるための研究に着手した.具体的には,新規標的分子とコントロール蛋白のタグ(FLAG)融合蛋白質を合成し,患者IgGと健常成人IgGを反応させ免疫複合体を形成させ,次にアガロースレジンに共有結合したAnti-FLAG affinity gelを加え免疫沈降させる.上清を回収することで患者IgGから標的分子に対する抗体を除去したIgGが採取でき,得られたIgGが生物学的活性を失っているかをハイコンテントイメージングシステムにより定量的に評価する予定である.研究は当初の計画通り順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,確実にBBB/BNBに生物学的活性がある自己抗体の新規標的分子を同定し,可能であれば,標的分子に対するモノクローナル抗体を新たに作製し,microfluidic in vitroモデル,動物モデルでの有効性を検討する研究を進めたい.具体的には, MimetusのMicrofluidicチップを用いて,ヒトBBB/BNB由来血管内皮細胞を管腔側に播種し,ペリサイトおよびアストロサイトをコラーゲンゲル下で3次元培養し,BBB/BNBモデルを形成する.流速負荷中でこのBBB/BNBモデルに作製したモノクローナル抗体を作用させ,ラベルしたIgG, 10kDa-/130kDa-dextranの透過性変化,電気抵抗値変化をリアルタイムかつ定量的に測定する.複数作製した新規標的分子に対するモノクローナル抗体の中で,最も生物学的活性を有するものを同定する.最後に,健常マウスあるいはラットに標的分子に対するモノクローナル抗体を経静脈的投与し,BBB/BNBの透過性が亢進するかを解析する.tight junction関連蛋白の変化は免疫染色法で確認し,透過性の変化は蛍光色素(10kDa-dextran/130kDa-dextran)により検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実験内容に変更はなかったが,当初予定していた実験試薬の変更により,1904円の未使用額が生じた。この未使用額については,令和2年度の実験試薬購入に充てる.
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