研究課題
2020年度は自己免疫性神経疾患患者IgGが結合するBBB構成内皮細胞に発現する標的分子の同定を試みた.患者IgGとBBB構成血管内皮細胞を用いてプロテオーム解析をし,これらのIgGに対する新規免疫標的分子を同定するアッセイの確立を試みた.ディッシュ上で生細胞に患者IgGを結合させ,クロスリンカーで固定させた後に蛋白を抽出しプロテインA/Gカラムを用いてIgGと結合した抗原を単離し,得られた抗原蛋白を2次元電気泳動,質量分析法により同定するアッセイ系を確立した.このアッセイにより複数のBBB破綻に関与する自己抗体の標的分子を同定した.特に視神経脊髄炎,傍腫瘍性小脳変性症を合併したランバート・イートン筋無力症でGlucose-regulated protein 78 (GRP78)抗体が同定された.更に,患者IgGからGRP78抗体を除去し,そのBBB構成内皮細胞に対する生物学的活性が低下するかを検討したところ,患者IgGからGRP78抗体を除去することによりBBB構成内皮細胞のNF-κB核内移行が抑制された.研究期間内の一連の研究により,①視神経脊髄炎では,長大な脊髄病変をもつ病型でBBB破綻が強くみられ,GRP78抗体が高率に陽性となり,GRP78抗体陽性例で症状がより重症となること,②傍腫瘍性小脳変性症を合併したランバート・イートン筋無力症でGRP78抗体が陽性となり,BBB破綻に関与することが明らかとなり,血液脳関門破綻をきたす新規自己抗体としてGRP78抗体の役割が明確となった.傍腫瘍性小脳変性症を合併したランバート・イートン筋無力症発症の病態機序として,GRP78とP/Q型VGCCは癌細胞表面に発現しており,腫瘍との交差免疫により産生されたGRP78抗体によるBBB破綻が,同じ機序より産生されたP/Q型VGCC抗体の脳内流入を促進し小脳機能障害を惹起する可能性が考えられた.
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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