研究課題/領域番号 |
18K07527
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
佐野 泰照 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20379978)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 皮膚筋炎 |
研究実績の概要 |
皮膚筋炎(dermatomyositis: DM)における筋微小血管障害のメカニズムの解明は新たな治療ターゲットになりうる可能性がある.本年度は,まず,DM患者血清が筋微小血管内皮細胞に与える影響を明らかにする目的で,DNAマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析を行った.皮膚筋炎患者3例の治療前血清をDM血清とし,健常者3例のプール血清をcontrol血清とした.すべての血清を非働化したのちこれらの血清(10%)を含む培養液をHSMMECs 由来条件的不死化細胞株であるTSM15株に37℃で12時間作用させた.作用後のTSM15株からtotal RNAを抽出し,DNAマイクロアレイにより両群の遺伝子発現の相違を網羅的に解析した.その結果DM血清群はcontrol血清群に比しCASP3やBCL2L11などアポトーシス促進遺伝子の発現は有意に上昇した.DM患者血清はHSMMECsのアポトーシスを促進させる可能性が考えられた. また,DMでは筋微小血管のTJの破綻が認められ,炎症性サイトカインなど筋線維にとって有害な液性因子のさらなる筋内鞘への流入を促進し,DMの病態を悪化させていると考えられる.近年,血液神経関門(BNB)を構成するペリサイトがBNB構成内皮細胞のバリア機能を高めるとする報告があり,筋ペリサイトも筋微小血管内皮細胞のバリア機能を高める可能性がある.我々が樹立したTSM15株およびペリサイト株(HSMPCT)を用い,HSMPCTがTSM15のバリア機能に与える影響につき解析を行った.結果,HSMPCTは TSM15の電気抵抗値を増大させた. HSMPCTはTSM15のバリア機能を高めることが明らかになった. TSM15のバリア機能増大にかかわるHSMPCTから放出される液性因子を今後同定していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
皮膚筋炎患者血清がヒト骨格筋微小血管内皮細胞の遺伝子発現に与える影響につき網羅的に解析することに成功した.また,骨格筋微小血管の内皮細胞と並んだ重要な構成細胞であるペリサイトを用いた実験も遂行することができた.ヒト骨格筋ペリサイトが内皮細胞に与える影響につき一定の知見を得ることができた.以上より本研究課題は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
セルカルチャーインサートを用いた骨格筋微小血管in vitro モデル,患者血清,ならびにヒトリンパ球を用い,皮膚筋炎における単核球の筋内浸潤の分子病態を解明する.さらに,主にヒト骨格筋ペリサイトに着目し,筋微小血管障害を修復する因子を同定する. また,これまで多発性硬化症などの中枢神経系自己免疫疾患の血液脳関門破綻およびその修復にかかわる多くの知見があるが,骨格筋微小血管の破綻および修復のメカニズムとも共通する分子基盤があるものと推察される.よって,我々が保有する骨格筋微小血管in vitro モデルを用いた研究に応用し,皮膚筋炎の新たな治療法開発へつながる研究を遂行していく予定である.
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