研究課題
多因子疾患である多発性硬化症(MS)ではゲノムワイド関連解析(GWAS)により200以上のリスク遺伝子領域が同定されたものの、未だ遺伝的要因の大部分は説明できていない(missing heritability)。申請者は、このmissing heritabilityを説明するものとして、由来する親の性別によりMS発症への遺伝子の寄与度が異なる「片親起源効果(parent-of-origin effect)」が病態に重要であると仮説を立てた。まず、両親および発端者の3名(trio)からなる欧米白人931家系の全ゲノムSNPデータとハプロタイプ情報を用いた最新の多項式モデルによる関連解析で、各SNPのアリルが父(または母)から発端者へ遺伝する頻度が偶然に比べて有意に多いか検定し、アリルが由来する親によるアリルのMS発症への寄与度の違いを検討した。昨年度はPREMIM/EMIMソフトウェアを用い、非主要組織適合遺伝子複合体領域に存在する200個のMSリスク関連SNPについて、片親起源効果を解析したが、今回は過去のGWASデータを用い、全ゲノム上でMS患者に対し片親起源効果を有する遺伝子領域を探索した。結果、母親起源、父親起源効果とも主要組織適合遺伝子複合体領域でのみゲノムワイド有意性を有した。片親起源効果が示唆された領域(p < 10^-6)では、母親由来片親起源効果では、既知のMリスクS関連領域であるEVI5の他、SCN1A、PR11-3L10.3、父親由来片親起源効果ではPRDM9、CSMD1、FRMD6が挙げられた。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に引き続き、新規MSリスク関連領域候補の同定を進めることができた。父親由来片親起源効果を介したMSリスク関連遺伝子領域の候補の一つであるPRDM9は、ヒストン修飾に影響を与えることが知られており、エピジェネティックな機構を介したMSリスクへの寄与が示唆された。
新規に同定したMSリスク関連領域の候補遺伝子について、生物学的寄与機構を含めた考察を進めていく方針である。
ほぼ予定した金額は使用したが、残金が生じたため、次年度に繰り越すこととなった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 5件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
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