研究課題/領域番号 |
18K07532
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
田中 章景 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (30378012)
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研究分担者 |
高橋 慶太 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (20773740)
土井 宏 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10326035)
竹内 英之 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30362213)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ALS / LOTUS |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の神経変性は、運動ニューロン軸索遠位端のシナプスより軸索変性が始まり、細胞体へと進行していくdistal axonopathyの様式をとる。この分子病態を、ミエリン関連神経突起伸長阻害因子(MAIs)の一つであるNogoとその受容体であるNgR1を介するシグナル伝達が増強することから、Nogoに対するモノクローナル抗体(ozanezumab)の臨床応用が行われたが、第II相試験での有効性は示されなかった。我々はNogoを含む NgR1のすべてのリガンドとの結合を阻害し軸索伸長を促進するとともに、ミクログリア、Tリンパ球にも作用する可能性のある新規神経再生機能分子LOTUSに着目した研究を展開している。本研究では、LOTUS遺伝子改変動物、リコンビナントLOTUSを駆使し、「神経変性」と「神経炎症」を同時に制御しうるALSの画期的な新規治療法の開発と病態解明を行う。令和元年度は、昨年度に引き続きALSモデルである変異SOD1(G93A)マウスとLOTUS過剰発現マウスの交配の例数を増やし、ロタロッドテスト、ワイヤーハングテストによる運動機能解析を進めた。その結果、15週目くらいからLOTUS過剰発現変異SOD1マウスは変異SOD1マウスに比べて有意な運動機能の改善を認め、さらに生存についても中央値で約19日延長することが明らかになった。また、LOTUS過剰発現変異SOD1マウスにおけるLOTUS発現が終末期においても保たれているかを確認したところ、内因性LOTUSのみを発現する変異SOD1マウスに比べて約3倍の発現量を保っていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LOTUS過剰発現変異SOD1マウスが変異SOD1マウスに比べて有意な運動機能の改善を認めることが多数例のマウスで確認され、当初の仮説通りの結果が得られたことより、進捗は順調である。今後は、この改善の背景を明らかにしていくことが主要な研究方向性となる。
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今後の研究の推進方策 |
LOTUS過剰発現が変異SOD1マウスの運動機能障害を改善することが明らかになったので、今後はその背景を探索していく。まずは、NeuN, Iba-1, GFAP, ChATなどによる免疫染色により腰髄におけるニューロン、グリアの状態を明らか病理学的に解析していく。さらに、ex-vivoでもLOTUSの神経保護作用を示すため、変異SOD1マウスと野生型マウス腰髄のニューロンの初代培養を行い、ここにリコンビナントLOTUSを添加し、細胞生存の比較を行う。一方、LOTUSがミクログリアにも発現している可能性を明らかにするため、脊髄サンプルを使ってウェスタンブロットを行いこれを証明する。また、LOTUSがレセプターであるNgR1のブロックを介して変異SOD1マウスの表現型を改善していることを明らかにするために、NgR1ノックアウトマウスと変異SOD1マウスを交配し、変異SOD1マウスの表現型が改善するかについても調べたいと考えている。これらにより、LOTUSがALSの治療標的分子となりうることを示していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、マウス解析が主体となり、病理解析や細胞培養系のex vivoの解析で使用した各種試薬の使用量がそれほど多くなかったため、次年度使用額が発生した。次年度は、これらを使用し、研究のまとめに入る予定である。
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