研究課題
1980年代後半に成体神経新生の存在が示され、神経変性疾患治療の選択肢が拡がることに期待が高まった。しかし、加齢に伴い神経新生領域の一つである脳室下帯(SVZ)では神経新生が減弱することが知られ、ニューロンの存在環境は極めて厳しいとされる。本研究の目的は、老化による神経新生シグナルの減弱をレスキューする糖鎖修飾/細胞外環境(ベストマトリクス環境)を示し、細胞、遺伝子治療を補完する新規治療方法を探ることである。申請者はこれまでに、マウス老化SVZではヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)の発現パターンや糖鎖修飾が変化し、ステムセルの運命制御が変化していることを検証し、ヘパラン硫酸(HS)鎖の6位硫酸基の減少とこれを基質とする脱硫酸化酵素Sulf1及び2の増加を報告した。本研究ではSulfノックアウトマウスを使用し、Sulfと神経新生の直接の関与と関連分子機構を提示し、その成果を基盤に、介入標的の絞り込みを目指している。HS 鎖は二糖単位からなるが、その組成,直鎖の長さおよび硫酸化のパターンに多様性をもち、HS 鎖の硫酸化の位置および程度によりそのタンパク質リガンドとの結合が制御されていると考えられている。特に、HS 鎖のグルコサミン残基6位の硫酸化は多くのリガンドタンパク質のHS鎖結合に必須であり、triS構造(2S6SNS)と2SNS構造ではシグナル伝達が異なることが知られる。そこで6Sを除去する酵素Sulf1/2単独及び2重遺伝子欠損マウスとコントロール(C57BL/6マウス)を用いた解析が重要となるため、Sulf1/2単独及び2重遺伝子欠損マウスを作成した筑波大学桝研究室と共同して研究を進めている。
2: おおむね順調に進展している
糖鎖の硫酸化酵素欠損マウス(Suf1/2 欠損マウス:筑波大学桝研究室供与)について、生後3ヶ月、14ヶ月齢の雄を用いて脳室下帯(SVZ)における神経幹細胞の増殖、分化能を免疫組織科学的に検証した。老齢マウスについてもサンプリングを開始しているが、飼育途中で死亡するものがあるため必要n数準備に時間がかかっているが、若齢のマウスの解析は順調に進んでいる。2019年度に予定されている糖鎖構造種の解析を、van Kuppevelt博士から供与された糖鎖抗体により一部解析を進めることができた。しかし、結果の解釈は、今後の老齢マウスの結果を持って考察することになる。構造多様性を示すHS鎖の中から特定の糖鎖構造を検出し、その中のどれが神経新生と関連するかを決定できる
若齢マウス(生後3ヶ月、14ヶ月齢)を用いたここまでの実験で、6-O -sulfationの増加が神経幹細胞の増殖や分化能の亢進に関与していることが想定された。今後、老齢マウスにおいての解析を進める。2019年度は次の研究計画①②を順に進める。①HS 鎖は二糖単位からなるが、その組成,直鎖の長さおよび硫酸化のパターンに多様性をもち、HS 鎖の硫酸化の位置および程度によりそのタンパク質リガンドとの結合が制御されていると考えられている。特に、HS 鎖のグルコサミン残基6位の硫酸化は多くのリガンドタンパク質のHS鎖結合に必須であり、triS構造(2S6SNS)と2SNS構造ではシグナル伝達が異なることが知られる。そこで6Sを除去する酵素Sulf1/2単独及び2重遺伝子欠損マウスとコントロール( C57BL/6マウス)を用いた解析が重要となる。これらの老化個体を用いたin vivo解析と初代培養 ( neurosphere法 )及びSulf1/2の発現量を調節した細胞株を用いたin vitroの解析を行う。単独及びダブルノックアウト細胞、Sulf1/2過剰発現細胞を用い、神経新生にかかわる増殖、分化事象の差異を調査する。②糖鎖構造の種類は、van Kuppevelt博士から供与された糖鎖抗体により、構造多様性を示すHS鎖の中から特定の構造を検出することができ、その中のどれが神経新生と関連するかを決定できる ( Takashima Y. 2016)。ここで候補となる糖鎖を模倣する市販糖鎖ライブラリを用いて、硫酸化の質と量のバリエーションを増やし最適条件を探索する。
老化脳を解析するため、高齢マウスを飼育しているが、途中で死亡することも多くコントロールと合わせて準備することが難しい。そのため、一部の実権が次年度に持ち越されたため研究費が持ち越されている。さらに飼育し高齢になった時点で解析実験を行う(2019年度)。
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2463/mrms.mp.2017-0031