研究課題/領域番号 |
18K07535
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
平澤 恵理 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50245718)
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研究分担者 |
桝 和子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50344883)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 成体神経新生 / 脱硫酸化酵素 / ヘパラン硫酸プロテオグリカン / ノックアウトマウス / 細胞外マトリックス / 老化脳室下帯 |
研究実績の概要 |
1980年代後半に成体神経新生の存在が示され、神経変性疾患治療の選択肢が拡がることに期待が高まった。しかし、加齢に伴い神経新生領域の一つである脳室下帯(SVZ)では神経新生が減弱することが知られ、ニューロンの存在環境は極めて厳しいとされる。本研究の目的は、老化による神経新生シグナルの減弱をレスキューする糖鎖修飾/細胞外環境(ベストマトリクス環境)を示し、細胞、遺伝子治療を補完する新規治療方法を探ることである。申請者はこれまでに、マウス老化SVZではヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)の発現パターンや糖鎖修飾が変化し、ステムセルの運命制御が変化していることを検証し、ヘパラン硫酸(HS)鎖の6位硫酸基の減少とこれを基質とする脱硫酸化酵素Sulf1及び2の増加を報告した。HS鎖の6位硫酸化を細胞外で脱硫酸化する修飾するSulf1/2は、GDNF、 HGF、FGF等ヘパリン親和性因子のHSPGへの結合を細胞外において調節し,それら因子のシグナル伝達を巧妙に制御するとされるが、個々の生命事象における詳細はまだまだわかっていない。そこで本研究ではSulf1及びダブルノックアウトマウス(Sulf1 / 2 DKO)を使用し、Sulfと神経新生の直接の関与と関連分子機構を明らかにすることにした。Sulf1及びダブルノックアウトマウス(Sulf1 / 2 DKO)マウスを作成、解析した実績をもつ分担研究者桝研究室と連携し、Sulf1 / 2 DKOマウスの老化個体を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筑波大学桝研究室と連携して研究を遂行している。桝研究室はHSPGの解析を得意とし、神経回路網の解明などで神経科学をリードする拠点の一つであり、Sulf1/2単独及び2重遺伝子欠損を作成、維持している。Sulf1 / 2 DKOマウスを長期に飼育し老化個体を解析しているが、途中でどちらかが死亡することも多く、対照実験とする同腹マウスと合わせて解析することができないケージも多々ある。しかしながら、結果は少しずつ出ており、予想通りエンドスルファターゼの不在は、6-O-硫酸化を示す糖類の増加と関連する非硫酸化糖類の減少につながり、Sulf1 / 2 DKOマウスのSVZでは、DCX免疫染色陽性反応の増加を示すことができている。高い6-O-硫酸化が神経発生に関わるFGF-2刺激を強めた可能性が示された。さらに野生型マウスでは、高硫酸化エピトープの発現は加齢とともに急速に低下することも確認された。これらの結果をまとめると、SVZに存在する基底膜様構造(フラクトン)中のHSの特定の組成がエンドスルファターゼによって修飾され、神経幹細胞の成長因子活性の調節すること、加齢に伴うSVZ神経発生の低下にエンドスルファターゼが関与する可能性が示されてきた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、COVID19対策により原則研究活動は休止となっているため先の予定はなかなか難しい問題があるが、原則研究活動再開後、統計解析に十分な解析数を得るように実験を進める。また、得られた結果の確証をさらに得るため、糖鎖の特異的エピトープに対する抗体を使った免疫染色も予定している。2019年度中に、すでにいくつかの抗体により上記に述べた硫酸化の変化を確認することに成功している。そこで、さらに確認を詳細な確認を行える抗体を所持するフランスの研究者に連絡をとり、準備を開始した。研究者から抗体譲渡の許可を得ているが、先方もCOVID19対策により抗体の準備が遅れている。今年度中に結果を出す様努力する。ここまでの研究成果により、すでに方向性は示せているので、最終的な統計解析ののち、論文投稿準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)上記に述べたように、遺伝子改変老化マウスが十分に得られなかったため、次年度使用額が発生した。 (使用計画)次年度繰り越し金を含め、今年度中に解析数を揃え結果を出すために実験を急ぐ。
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