研究課題/領域番号 |
18K07538
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 信二 藤田医科大学, 医学部, 教授 (40572079)
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研究分担者 |
武藤 多津郎 藤田医科大学, 医学部, 教授 (60190857)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / 脳血管障害 / 炎症 / 糖脂質 / 炎症関連分子 / 血管内皮 |
研究実績の概要 |
近年、神経疾患における糖脂質の関与が注目されており、アテローム血栓性梗塞において中性糖脂質がプラーク形成のみならず、炎症性サイトカインを誘導し障害を促進する機序や、ラクナ梗塞においてastrocyteや血管内皮細胞に炎症性サイトカインを介して作用し、neurovascular unitの障害を促進する可能性が示されてきた。本研究の目的は、脳血管障害における、中性糖脂質およびライソゾーム水解酵素活性の変動を介した炎症機転や神経保護機転を基礎的・臨床的両側面で明らかにすることにある。これまでに当院脳神経内科に入院した急性期脳梗塞患者の、脳梗塞臨床病型(TOAST分類)、主要症候、一般血液・凝固・生化学・免疫学的所見、画像所見(頭部MRI、頭頸部MR angiography、脳血流SPECT)、治療薬(抗血小板薬、抗凝固薬、スタチンなど)についてのデータベースを作成し、急性期・回復期・慢性期の血清、リンパ球を採取し保存を進めている。一部患者の急性期血清においてはリンパ球表面抗原の解析や、血清中の炎症関連分子(IL-6、IL-10、ICAM-1、VCAM-1、MCP-1、MMP-2、MMP-9、TNF-α、TGF-βなど)の定量的解析、中性糖脂質(lactosylceramide、glucosylceramideなど)の発現解析、ライソゾーム水解酵素(α- & β-galactosidase, β-glucosidase, β-hexosaminidase, neutral sphingomyelinaseなど)活性測定を進めている。後述の通り本年度の研究実施が遅延したため、現時点では病型別や重症度別、患者背景別の炎症関連分子や糖脂質発現プロファイルの差異は明らかになっていないが、今後の解析で傾向が明らかになれば、対象を絞って詳細な発現解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
急性期患者の血清、リンパ球を採取・保存し一部の解析を実施しているが、回復期・慢性期の血清・リンパ球については、軽症例の入院患者の早期退院や、中等症以上の入院患者の早期の回復期リハ転院により入院期間が短縮したため、検体数が少なく解析が困難と判断した。また、研究実施の主力となっていた研究補助員の退職により、蛋白および糖脂質の定量的解析を中止せざるを得ず、今年度の解析が大幅に遅延し、成果発表に至っていない。当初計画していたアストロサイト-血管内皮細胞共培養系における、中性糖脂質添加による炎症関連分子の発現と形態的変化、apoptosis関連分子の検討については未着手となっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では脳梗塞の病期別(急性期・回復期・慢性期)比較解析を予定していたが、急性期症例に絞り、臨床病型別(アテローム血栓性梗塞・ラクナ梗塞・心原性脳塞栓症)や年齢・性別、基礎疾患の差異に基づく炎症関連分子および糖脂質発現の差のデータ集積・解析を、新たに加わった研究スタッフの協力を得て集中的に実施する。アストロサイト-血管内皮細胞共培養系を用いる実験系については、他の解析の進捗や結果に応じて引き続き実施を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた回復期・慢性期脳梗塞患者の解析を中止し、急性期患者に対象を絞ったため、炎症関連分子、糖脂質発現解析の実施数が当初計画より少数にとどまっている。また、収集した急性期脳梗塞患者についての解析が研究補助員の退職により中断したため、総じて解析に必要な試薬や物品の購入ペースが大きく遅延した。
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