研究課題
高齢者に多い認知症患者の脳内には、複数の原因疾患に関係する病的変化が併存した混合病理を認めることが多く、その臨床症状・治療反応性・予後は多様である。しかし現在用いられている認知症の臨床診断基準は原因疾患が単一であることを仮定しており、混合病理を呈する認知症患者の適切な診断・治療に関する検討は少ない。我々は今までに認知症患者の脳内にみられる異常蓄積タンパクを可視化する技術を用いて、各種認知症における神経障害や臨床病態との関連を明らかにしてきた。本研究では、脳内異常蓄積タンパクの可視化技術を応用し、認知症患者における脳病理の多様性と治療反応性ならびに予後との関連を明らかにする。本研究により混合病理を呈する認知症患者の診断・治療法が確立し、認知症臨床診断水準の向上による根本治療薬開発促進が期待される。我々は2021年度に引き続き、2022年度もアルツハイマー病(AD)、非AD性認知症、軽度認知機能障害、健常者を対象に、PETによる脳内異常蓄積タンパク(アミロイドおよびタウ病変)の評価(一部症例では脳糖代謝評価)およびMRI検査(形態学的評価ならびに機能障害の評価)、臨床神経学的評価、認知機能評価を行い、PETの動態解析などを行った。また、2021年度までに技術移転を終えた新潟大学脳研究所においても、同様の臨床研究を開始した。研究期間を通じて得られたデータの解析結果から、①疾患毎に特徴的な脳領域におけるタウPETの集積を評価することで、混合病理を認める症例を含めた認知症の背景病態が推定可能であること、また②非典型的な臨床経過を呈する個別症例においても、PETを用いた脳内異常蓄積蛋白の評価が、中核背景病理の推定に有用であることなどを明らかにした。これらの成果について、一部学会発表を行うとともに、論文投稿を行った。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 8件、 招待講演 29件)
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