超高齢化社会を迎えたわが国では,加齢と疾患に伴う筋萎縮(サルコペニア)はADL低下の主因である。一方、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィン遺伝子の変異により、骨格筋膜の裏打ちタンパク質であるジストロフィンが欠損して生じ、経時的に筋力低下と筋萎縮が生じる難治性筋疾患である。興味深いことにDMDおよび高齢者の骨格筋では、共通して速筋型タイプII筋線維優位の萎縮を認めるが、DMDと加齢に共通する骨格筋量調節の詳細な分子機構は不明である。そこで申請者は、若齢(8週齢)と高齢(80週齢)の野生型およびDMDマウスの骨格筋を対象に、超高感度定量質量分析(HiRIEF-LC-MS/MS)によりタンパク質間相互作用のインタラクトミクス解析を実施し、ジストロフィー筋と加齢性筋萎縮症に共通する代謝、炎症、筋成長経路間のクロストークを明らかにした(Mol Cell Proteomics. 2020)。さらに、高齢マウス由来のジストロフィー骨格筋で発現が上昇していた特定分子種に着目した筋萎縮分子病態のさらなる解明を別研究として進めている。
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