研究課題/領域番号 |
18K07547
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
五十嵐 禎人 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 教授 (40332374)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 触法精神障害者 / 心神喪失者等医療観察法 / 司法精神医学 / 司法精神医療 / 精神鑑定 / 精神保健福祉法 / 刑事責任能力 / 刑事法 |
研究実績の概要 |
従来の精神科医療では社会復帰困難とされてきた患者であっても、医療観察法による医療の枠組みでは、社会復帰可能となる事例が少なくない。近年、重大な他害行為を行い一般の精神科病棟に入院し、治療にあたった精神科医が医療観察法による医療が適切と考えたにもかかわらず、医療観察法の申立てが行われない事例(以下、「医学的医療観察法非導入事例」という)の存在が指摘されている。医療観察法による医療の効果を考えると、こうした事例が医療観察法の申立ての対象とされなかった理由を調査し、必要な場合には、医療観察法制度の見直しを検討する必要があると思われる。 本研究では、1)医療観察法の指定入院医療機関に勤務する精神科医を対象とした調査によって医学的医療観察法非導入事例を収集し、また、該当事例の多い施設には、聞き取り調査を行う。2)これらの知見をもとに医学的医療観察法非導入事例の類型化と、モデル事例の作成を行い、精神科医に対する全国規模の調査を行ない、医学的医療観察法非導入事例の実態や対処方法に関する精神科医の意識を明らかにする。3)そこで得られた知見をもとに、精神科医と法学者からなる研究会議で議論を行い、医学的医療観察法非導入事例の適切な処遇の在り方に関して検討し、必要な場合には、医療観察法制度の見直しに関する提言を行うことを予定している。 令和元年度は、平成30年度の調査で、医学的医療観察法非導入事例を経験したと回答した9施設15名の医師を対象として、事例の概要や司法機関等の関与に関する調査を行い、5施設8名の医師から医学的医療観察法非該当事例14例を収集した。また事例の多かった施設に対して聞き取り調査を行った。これらの結果をもとに、医学的医療観察法非導入事例の類型化とモデル事例の作成を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、平成30年度中に医学的医療観察法非該当事例の類型化・モデル事例の作成を終え、令和元年度中に、医学的医療観察法非該当事例に関する全国規模の調査を行う予定であった。しかし、個人情報保護の観点から回答にあたり指定入院医療機関の倫理委員会の承認を条件としたため、その連絡調整に時間を要したこと、また、全国規模の調査を行うにあたり調査対象者が所属している学会との連絡調整に時間を要したために、全国規模の調査を行うことができなかった。そのため、やや遅れていると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、医学的医療観察法非該当事例の類型化に基づいて作成したモデル事例をもとに、日本司法精神医学会の会員など司法精神医学に関心と経験のある精神科医を対象として、医学的医療観察法非導入事例の経験の有無やモデル事例への対応に関する意見などについて、全国規模の調査を行う予定である。調査結果をもとに司法精神医学に造詣の深い精神科医と精神保健福祉法制とその運用に詳しい法学者、弁護士などによる研究会議を開催し、医学的医療観察法非導入事例の適切な処遇の在り方に関して検討し、医療観察法制度に必要な見直しについて提言を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況の欄に記載したように、医学的医療観察法非導入事例に関する全国規模の調査が令和2年度に持ち越しとなった。そのために調査票の送付・回収にかかる費用が、次年度使用額として生じた。これらの費用は、令和2年度の調査実施のための費用として使用する予定である。
|