研究実績の概要 |
精神病性障害の発症危険群(at-risk mental state; ARMS)の基準を満たす症例および初回エピソードの統合失調症患者を対象に脳磁気共鳴画像検査、T&Tオルファクトメーターを用いた嗅覚機能検査、および事象関連電位といった生物学的検査に加え、症状評価、社会機能評価、認知機能評価等を行い症例蓄積を継続している。これらの症例の臨床経過は専門外来においてフォローしており、定期的に症状や認知機能などを評価している。 頭部MRI検査において、Heschl横回の粗大な脳回パターンの変化が統合失調症圏において病前からみられる脆弱性に関わる所見であること(Takahashi et al., 2021abc)やARMS群にみられる皮質菲薄化が機能的転帰の不良と関連すること(Sasabayashi et al., 2021)などを見出した。また従来は神経発達障害を反映すると考えられてきた脳回指数が統合失調症の病初期において進行性に変化することがわかった(Pham et al., 2021)。 脳波検査では事象関連電位(特にミスマッチ陰性電位とP300)の変化がARMS群における将来の精神病移行や初発統合失調症群における将来の寛解を予測しうる生物学的指標であることを示した(Tateno et al., 2021; Higuchi et al., 2021; Nakajima et al., 2021)。嗅覚機能検査については新型コロナ流行に伴い検査中止としており、新たなデータ収集は行っていない。今後さらに症例を蓄積しながら研究を進めることで、生物学的所見による精神病性障害の予後予測法の確立を目指したい。
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