研究課題/領域番号 |
18K07558
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山口 修平 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (80135904)
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研究分担者 |
小黒 浩明 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (50346384)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アパシー分類評価 / 事象関連電位 / フィードバック情報 / 内発的動機づけ / 外発的動機づけ / 機能的MRI |
研究実績の概要 |
本年度は以下の3点について研究を実施した。 1) まずアパシーの表出様式である認知面、情動面、実行面を区別して評価できるスコアを開発した。欧州にて開発されたLille Apathy Rating Scale(LARS)(2014)を元に日本語版を作成した。日本語訳については3人の翻訳者が独立にそれぞれ翻訳し、最終的に合意できる表現を用いた。そして作成した翻訳に対して翻訳業者を通じて逆翻訳を行い、逆翻訳とオリジナルを比較し、日本語版の再修正を行い最終版とした。 2) 脳波計測による事象関連電位を用いてアパシーの電気生理学的指標を検討した。課題として金銭報酬フィードバックを伴う数字の弁別課題を開発した。被検者は若年健常者とし、情動評価をアパシースケールで行った。その結果、フィードバック刺激に対するP3成分の振幅がアパシー傾向と負の相関を示し、フィードバック関連P3がアパシーの客観的指標として有用である可能性が示された。 3) 上記とは独立して、機能的MRI研究用に内発的動機づけと外発的動機づけを評価するために、能動的にハンドグリップによる行動を行わせる認知課題を開発した。グリップ操作で画面を操作するゲーム課題を作成し、3つの条件を設定した。コントロールとして単純課題(成果、報酬なし)、内発的動機づけ課題として成果をフィードバックする成果課題、外発的動機づけ課題として金銭報酬をフィードバックする報酬課題を作成した。現在、機能的MRI撮像と同期させたパイロット実験を行っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アパシーの評価と内発的および外発的動機づけ評価を正確に行うことが本研究の最重要点である。このため作成した評価スケールの妥当性・信頼性の検討、および機能的MRI内での行動実験課題の開発に時間を要している。事象関連電位による検討はほぼ予定どおり完了した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に作成したアパシー分類スケールの日本人での信頼性と妥当性をまず若年および高齢の健常者集団で検証する。その後、脳卒中やパーキンソン病患者においてアパシーの分類スケールによる評価を行う予定である。事象関連電位による検討については健常者での検討を終えたので、MCI患者での臨床応用を予定している。また機能的MRIによる内発的および外発的動機づけの神経機構の解明については、課題作成を完了し、健常者において実際の脳活動の計測に入る予定である。そして動機づけに関わる神経ネットワークが明らかになった段階で、反復磁気刺激の臨床研究に進む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の被験者に対する謝金として使用する予定の予算に若干の残が生じた。これは被験者数が予定より若干少なかったためで、次年度の謝金として使用する予定とした。
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