アパシーは目標志向的行動の欠如した状態で、多くの精神・神経疾患において高頻度に出現する。アパシーの病態は多様であるが、その発生機序については明らかになっていない。本研究ではアパシーの多様性を主観行動レベルで測定できる質問紙指標を開発し、そのアパシー指標と関連する脳機能を課題ベースのfMRIにて検討することを目的とした。アパシーは実行制御障害、情動障害、自己賦活障害の3つの次元が存在するとされているため、これらを独立したスコアとして評価できるDimensional Apathy Scale(DAS)の日本語版を作成した。英語版の原著者の許可を得て、日本語訳を作成し、同一性が確認されるまで逆翻訳を繰り返し行った。500人の成人を対象にウェブ調査を行い、DASに対する回答を得た。DAS合計得点は一次元のアパシースケールと有意な相関があった。英語版DASと同様に、3因子構造が確認された。この日本語版DASによって測定されたアパシー及びその下位次元の程度が、どのような脳機能と関連しているかを調べるため、内発的動機づけを測定する課題を作成した。報酬の大きさとコストを示唆する刺激に対して、実際にコストをかけてそのタスクを実行するかどうかを調べる課題であった。ここでの報酬は金銭ではなく、タスク内の報酬であり、金銭的・生理的報酬ではなかった。予備的検討(N=8)により、報酬が大きいほど、コストが少ないほど、実行選択率が高くなっていた。アパシーが強い個人ほど、実行選択率が低くなると予想された。
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