研究実績の概要 |
本研究における当初の目的通り,知的障害者における認知症の有病率を明らかにすることができた.調査対象者は493名で,うちダウン症者が34名,ダウン症を有さない者が459名であった.ダウン症については34名中7名が認知症であり,全例がアルツハイマー型であった.ダウン症以外の知的障害者459名中10名が認知症と診断され,アルツハイマー型が6人,血管性が2人,その他が2人であった.ダウン症以外の知的障害者における,年代ごとの認知症有病率は,55-64歳で3.5%,65-74歳で13.9%であり,同年代の一般高齢者と比較すると,より高頻度であった.また,認知症を診断する際の診断基準については,DSM-Vがもっとも有用であった. さらに,認知症診断におけるDementia Screening Questionnaire for Individuals with Intellectual Disabilities (DSQIID)の有用性も評価した.DSQIIDは,ダウン症者における認知症をスクリーニングするためのスケールとして開発されたが,ダウン症以外の知的障害者にも有用ではないかと原著者らにより言及されていた.ただ現在まで,ダウン症を有さない知的障害者を対象とした調査は行われていなかった.今回,我々は,ダウン症を有さない知的障害者を対象としてDSQIIDを使用し,10/11点をカットオフとしたときに,sensitivity 100%, specificity 96.8%となり,最も高い判別率を示した. 本年度は, 2020年11月に日本認知症学会,12月に日本老年精神医学会,12月に日本発達障害学会(演題2つ),2021年1月に岡山脳研究セミナーにて上記内容を発表した.
|