研究課題
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の病態は不明な点も多く、現行の標準的な治療を行っても症状が遷延する患者も多く存在する。このため、本研究では疾患モデルラットを用いて① PTSD の詳細な脳内発症機序の解明とこれを基盤とした新規予防法の開発、② 治療抵抗性PTSD の主要症状(恐怖記憶の消去障害)の神経回路の解明とその神経活動操作による新規治療法の開発、を目的としている。①に関して、平成30年~31年度にPTSD の病態形成過程において、心的外傷後のグルココルチコイド受容体系の核内への移行が起点となり、アポトーシス抑制因子であるBcl-2遺伝子のプロモーター領域へのグルココルチコイド受容体結合が亢進し、Bcl-2 mRNAの発現が低下すること、その結果として脳内でのアポトーシスが増加することを見出した。令和2年度には、同受容体の阻害薬をストレス負荷直後に投与することで、心的外傷後の恐怖記憶の消去障害とアポトーシスが予防されることを確認した。②に関して、平成30年~31年度に通常飼育ラットにおいて、内側前頭前野皮質の中の下辺縁皮質領域の神経活動の亢進が恐怖記憶の消去を促進させることを見出したが、PTSDモデルラットでは、同脳部位の賦活による恐怖記憶の消去の促進の程度は通常飼育ラットに比して有意に小さかった。令和2年度には、その機序として、下辺縁皮質領域のアポトーシスの増加と化学遺伝的賦活による神経活動の亢進レベルがPTSDモデルラットで有意に低いことを同定した。
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