本研究の目的 : ①被爆後72年が経過した現在の被爆者の精神医学的問題を明らかにする。②同じ地域に住む被爆者と非被爆者との現在の健康度を調べ、被爆との関連を調べる。③調査対象群での認知症症状の出現率を調べ、被爆者と非被爆者で差異を検証する。 方法 : 145名の被爆者(平均年齢77歳、男性68名、女性77名)と70名の非被爆者(平均年齢79歳、男性7名、女性63名)を対象にした。第1段階として、認知機能及び精神健康状態を評価し、そこで問題が認められた群に対して、第2段階の調査への参加を依頼し、第2段階で詳細な認知症状と、精神症状、QOLなどを評価した。 結果 : 年齢、MoCA-J、GHQ-12、WHO-DAS2.0では、被爆者と非被爆者の間に有意差を認めなかった。第1段階での被爆者における認知症症状の出現率は、非被爆者の0.69倍(95%CI、0.38-1.26)であったが、有意差は認めなかった。第1段階での被爆者における精神健康問題の出現率は、非被爆者の2.12倍(95%CI、0.82-5.44)であったが、有意差は認めなかった。第2段階での被爆者における精神健康問題の出現率は、非被爆者の0.83倍(95%CI、0.19-3.56)であったが、有意差を認めなかった。 結論 : 被爆後72年経過した被爆者と非被爆者との間で認知機能と精神医学的状態及び日常生活能力において、統計学的に有意な差は認めなかった。
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