研究課題/領域番号 |
18K07567
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
文東 美紀 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (00597221)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 死後脳 / 細胞分画 / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、統合失調症患者の脳組織において、どの細胞種でどのような遺伝子発現変化が生じているかを明らかにすることを通じて、精神疾患の分子病態の理解を進め、将来の創薬の起点を得ることである。そのために患者・健常者の死後脳前頭葉からさまざまな細胞種由来の細胞核を分画したのち、RNA-seqによる網羅的な遺伝子発現解析を行い、患者-健常者間で発現差異が見られる遺伝子を検出することにより、病態・病因に関与する分子やパスウェイを同定することを目指す。 本年度は主に、ヒト凍結死後脳から抽出した細胞核を使用してRNA-seqを行うための実験条件検討を行った。細胞質に含まれるRNAと比較すると、細胞核に含まれるRNAは極微量であり、通常のRNA-seq法では解析が困難であることが予想されたため、シングルセルからのトランスクリプトーム解析に実績のあるRamDA-seqを採用することとした。テストサンプル死後脳から、100個の細胞核を使用して、RamDA-seqライブラリ作製の最適条件を決定した。また統合失調症患者、健常者それぞれ10人ずつの死後脳から生化学的に調製した細胞核から、セルソーターを用いてニューロン、オリゴデンドロサイト、活性型マイクログリア、活性型アストロサイト、その他のグリア細胞由来の細胞核の分画を行い、それぞれの画分より100個ずつの細胞核を取得した。現在はこれらのサンプルからRamDA-seq用のライブラリの作製を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テストサンプルを用いて、100個の細胞核に含まれる微量RNAからRNA-seqライブラリを作製するための条件検討が終了した。また患者・健常者死後脳サンプル(n=10ずつ)から、6種類の細胞種由来の細胞核分画も終了した。現在はRNA-seq用のライブラリ作製を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
統合失調症患者・健常者(n=10ずつ)の死後脳前頭葉からニューロン、オリゴデンドロサイト、活性型マイクログリア、活性型アストロサイト、その他のグリア細胞の細胞核由来のRNA-seqデータの取得を行ったのち、バイオインフォマティクス解析を行い、患者-健常者間で発現差異が見られる遺伝子を検出することにより、病態・病因に関与する細胞種や分子、パスウェイの同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度におけるRNA-seqのlibrary作製費用が、当初の計画よりも少額で済んだため、次年度使用額が生じている。この予算は、翌年度のRNA-seq library作製費用や、次世代シーケンサー解析に使用予定である。
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