研究課題/領域番号 |
18K07569
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
木川 昌康 札幌医科大学, 医学部, 助教 (50581146)
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研究分担者 |
佐々木 祐典 札幌医科大学, 医学部, 講師 (20538136)
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30301401)
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (40381256)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 難治性うつ病 / 骨髄間葉系幹細胞 / 神経回路リモデリング / FASD / 血中exosome / brain derived exosome / miRNA / 幹細胞移植 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,治療抵抗性を示す難治性うつ病に対する治療法の新たな候補として,「骨髄間葉系幹細胞(Bone Marrow-derived Mesenchymal Stem Cell: BM-MSC)+薬物の併用療法」を位置づけ,その有用性について,モデル動物を作成して検討し,治療による脳機能変化すなわち脳神経回路網のリモデリング(ニューロン・シナプス新生増加~抑うつ症状改善・認知/社会性機能増強)を明らかにすることである。2年目は,胎生期にアルコール曝露,さらに青年期にcorticosteroneを投与する二重ストレス曝露による難治性うつ病モデルラットを作成し,薬物,およびBM-MSC投与による,社会性機能(ソーシャルインターラクション,他者援助行動)に対する行動薬理学解析を行った。①ノーマル群,②コントロール群(難治性うつ病モデル群),③コントロール+(漢方薬)加味帰脾湯投与群,④コントロール+BM-MSC投与群,⑤コントロール+加味帰脾湯投与+BM-MSC投与群の5群における比較解析において,②コントロール群では,ソーシャルインターラクション,および他者援助行動が,いずれも減弱していた。一方,③~⑤の薬物投与,細胞投与,および薬物+細胞投与群では,いずれの群でも,それらの行動障害が,ノーマル群に近いレベルへ改善しているとの知見を得た。今後,あらかじめCellBrightで標識したBM-MSCの脳内移行と脳内分布動態の解析を行うとともに,他者援助行動の指標とした拘束ラットを動かす行為(引っ張る,押す,中へ潜り込む)の増強が,共感性機能に基づく行動であることについて,扁桃体-前部帯状皮質-後部帯状皮質-背側海馬-腹側海馬の,脳内共感性-実行機能ループの活性変化解析によって確認し,将来のヒト臨床試験時の脳機能変化解析指標の選定等の基礎データとなるよう,まとめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,難治性うつ病モデル動物に対してBM-MSC+抗うつ薬を投与し,新たな 難治性うつ病治療手段としての評価・検討を行う。初年度は,解析に用いる病態モデル動物として,若年期にcorticosterone (CORT)を慢性投与した“うつ病モデルラット”と、胎生期にアルコールを曝露させた上で,若年期にCORTを慢性投与した“難治性うつ病モデルラット”を作成した。その上で,病態モデル群の一部には,抗うつ薬を投与し,行動学的変化について,各群間で比較検討を実施した。2年目には,実際に薬物投与,BM-MSC投与,薬物+BM-MSC投与を行った動物の社会性機能の行動解析を実施した。今後,投与BM-MSCの脳内移行・脳内動態の解析を行うとともに,血液,および脳各領域での分子変動解析,並びに,末梢血exosome中の分子変動解析の検討を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
予備検討の結果を踏まえ,まず,モデル動物に対する,薬物(抗うつ薬・漢方薬)投与,BM-MSC投与,薬物+BM-MSC投与の影響について,社会相互作用試験,共感性機能試験を用いた比較解析を行い,抑うつ症状・認知・社会性機能に深く関わる行動学的変化の確認を実施する。次に,抑うつ症状・認知・社会性機能に深く関わる脳神経系の変化について,①海馬(背側・腹側),②帯状皮質(前部・後部),③扁桃体,④視床下部,⑤側坐核,の各領域で,神経新生・シナプス発達・栄養因子シグナル・Glutamate/GABA balance modulationの観点から解析を行う。加えて,脳5領域における転写制御因子NRSF/REST,(社会性機能との深い関連が報告されている) PV・Somatostatin陽性細胞数と関連蛋白otx2,後シナプス蛋白PSD95の発現変化を解析し,上記の観点に関わる分子変動として同定していく。さらに,血液を用いた解析として,神経細胞特異的マーカー (L1-CAM) を発現した末梢血小胞中の分子群の定量解析を実施する。特に,脳神経系での変化に対応して,上記観点に関わるNRSF/REST,otx2,BDNF,およびmiRNA 206の含有量の比較測定を予定している。
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