研究課題/領域番号 |
18K07571
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
伊藤 賢伸 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90420851)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ECS / depression / BBB / 血液脳関門 / antipsychositics |
研究実績の概要 |
我々は、2017年電気痙攣刺激(ECS)をラットに行うことで、血液脳関門(BBB)の透過性が一過性に亢進することを確認した。BBBの透過性を自在に変化させることができれば、中枢神経に対する薬物療法が非常に容易になる。2018年度はBBBの透過性がECSにより一過性に亢進する作用機序を明らかにするために、いくつかの仮説を立て、検証した。 第一の仮説であるが、そもそもBBBは血管内皮細胞がタイトジャンクションによって互いに結合し、気密性を高めることで血管内皮細胞間隙による輸送は制限され、細胞内を通過する能動輸送が主体となることで、通過物質が制限されている。そのため、BBB透過性亢進は、血管内皮細胞に何らかの変化が起こった可能性がある。そこで我々はエレクトロポレーションという現象に着目した。エレクトロポレーションは、細胞に電気刺激を与えることで一過性に細胞膜に穴が空く現象である。ECSにより血管内皮細胞に一過性にエレクトロポレーションが起こり、通常通過しない物質を通過させるのかもしれない。この仮説を検証するために、尾静脈(抹消)から通常は細胞膜を通過しないプラスミドを投与した。さらにこのプラスミドに蛍光蛋白質であるGFPを付加した。もし仮説が正しくECS後一過性にエレクトロポレーションが起こり、血管内皮細胞に穴が空けば、プラスミドが血管内皮細胞内に侵入し、GFPが発現すると考えた。GFPの蛍光はラット脳の自家発光と重なる部分もあったため、GFPを免疫組織化学染色した。いくつか投与量を変更しプラスミドを投与したが、脳内でGFPの発現を確認することはできなかった。 この結果からはECSによるエレクトロポレーションを確認できなかったが、抹消から投与したプラスミドが、脳に侵入する前に失活してしまった可能性も否定できない。投与方法や投与物質を変更しながらさらに検証を重ねていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BBB透過性を測定するため、尾静脈から薬物を投与する必要があったが、尾静脈等の技術習得に時間がかかった。さらに抹消から中枢神経へのBBB透過が血管内皮細胞を透過するという仮説を実証するための手技を検証した。プラスミドは組織外では作用しないが、細胞内では特定のたんぱく質を生成する特徴があるため、蛍光蛋白質をコードしたプラスミドを尾静脈から投与し、プラスミドが血管内皮細胞や中枢神経に移動することでBBB透過性亢進を視覚化することを試みた。プラスミドは高価であるため、購入後、自施設で培養を試みたが、適切な培養に時間を要した。さらに抹消からプラスミドを投与する実験はあまり行われておらず、滴量が不明であったため、様々な投与量で投与を行い、滴量を見極める必要がある。しかし、ポジティブコントロールの作成自体が困難で、投与量の決定がまだ行えていない。抹消から脾臓や肝臓の細胞に取り込まれたという実験があるため、今後はそれを参考に行っていく予定である。 さらにプラスミドが末梢血液にさらされることでプラスミドの失活が起こる可能性もあったが、どの程度失活するのか、不明であった。そのため、プラスミドを用いないBBB透過性の測定方法も模索する必要があり、時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
ECSによるエレクトロポレーションを確認できなかったが、抹消から投与したプラスミドが、脳に侵入する前に失活してしまった可能性も否定できない。投与方法や投与物質を変更しながらさらに検証を重ねていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅行会社を厳選することで、旅費を軽減することができた。抗体の購入に際して、業者と交渉し経費を削減した。 余剰となった予算は、今後新たなプラスミドや、BBBに関係するマーカーや抗体を購入する費用に充てる予定である。
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