研究課題/領域番号 |
18K07571
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
伊藤 賢伸 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90420851)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ECT / BBB / ECS / うつ病 / 免疫療法 |
研究実績の概要 |
生後6週の雌ラットを使用した。2018年度には尾静脈からプラスミドを投与し血管内皮細胞への透過性を検証したが、プラスミドが血管内皮細胞に取り込まれたことを確認できなかった。そこで我々は、蛍光色素を下大静脈から投与し、ECSによりBBBの透過性が亢進した結果が、蛍光色素を尾静脈から投与しても、同様の結果が得られることをまず確認することとした。以前報告した方法にのっとり、尾静脈からsodium fluoresceinを投与した。さらに以前の実験では、電気けいれん刺激(ECS)を10回連続で行ったが、BBB透過性亢進を認める最小の刺激回数を確定するため、1回と5回で行った。その結果、ECS1回よりも5回の方が透過性は亢進するものの、ECS1回でも透過性は亢進する可能性が示された。 次に、同じ方法でどの程度の分子量まで透過するかを確認することとした。Evans blueをBSAに付加し、高分子の蛍光物質として末梢から投与した。粘性が非常に高かったため、濃度をいくつか変更し、0.625%で投与すると尾静脈から投与しやすいことが分かった。高分子蛍光物質でも、ECS1回でBBB透過性亢進が起こることが示された。しかし、ECS5回に比較するとその透過性は低かった。またこれらの透過性は、in vivo imaging systemを用いて行ったため、灌流の不具合や硬膜除去が不十分の場合、誤差が非常に大きいことも分かった。硬膜除去の程度で結果が変わることを防ぐために、脳を冠状断で切断し、切断面をIVISで定量した。その結果、やはり、ECS1回よりも5回の方がBBB透過性が亢進することが明らかとなった。今後はヒトでの免疫療法を想定し、IgGの末梢からの投与を行う予定である。また、これまでは以前の研究の踏襲であったため、雌ラットを使用していたが、今後は月経周期の影響がない雄ラットを用いること、6週よりも高齢なラットを用いることを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた末梢からのプラスミド投与が困難であった。溶媒を変更する、投与量を変更するなど検証を行ったが、血管内皮細胞に侵入した形跡を検出できなかった。そのため、BBB透過性亢進の機序解明よりも、臨床上投与することを想定した実験を先行することとした。以前発表した論文では下大静脈投与を行っていたが、現在は尾静脈からの投与が可能となっており、下大静脈投与と尾静脈投与での違いがないかを確認した。 がどの程度の大きさの分子まで透過可能なのかを検証することとした。
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今後の研究の推進方策 |
高分子であるBSA不可エバンスブルーがECSによりBBBを透過する可能性がパイロット実験で示されたため、もう少しラット数を増やして確認する。さらに雄ラットや週数が上のラットでも同様の結果が得られるかを確認する。 安価な高分子で透過性亢進の範囲が決定した後、IgGを末梢から投与し、ECS後BBB透過が起こるかを確認する。この際は、IgGの投与量を変更して必要量を確定する。IgGの透過性は最初はIVISで行うが、IVISで確認できたら、IHCも行い、実際に脳のどの部分に浸潤したかを確認する。 IgGの透過も可能となれば、アルツハイマー病モデルマウスを使用して、Aβ除去を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年1月以降、徐々にCOVID-19が世界に広がり、物品の購入が困難となった。さらに当該施設が東京都内であったため、都からの自粛要請もあり、研究者の出勤も制限されるようになった。そのため、購入すべき薬剤が購入できず、繰越金が生じた。繰越金は、前年度購入できなかった生化学的試薬や抗体の購入に使用する予定である。
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