研究課題/領域番号 |
18K07578
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
前川 素子 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (50435731)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PPAR alpha / 樹状突起スパイン / 統合失調症 / 認知機能障害 / 治療 |
研究実績の概要 |
<研究の背景> 統合失調症は代表的な精神疾患の一つであるが、その病態生理に関しては不明な点が多い。研究代表者らは、本研究において統合失調症の中に「核内受容体PPAR (peroxisome proliferator-activated receptor) alphaの機能不全が示唆される群」が存在する可能性を示した(Wada, Maekawa et al., 2020)。さらに、昨年度までにPPAR alphaがシナプス伝達経路に含まれる遺伝子の制御に関わる可能性を示した。 <研究の目的> 今年度は、PPAR alphaが統合失調症の治療標的となる可能性について、薬理学的統合失調症モデルマウスを用いて解析した。 <令和3年度の研究実績> 薬理学的統合失調症モデルマウス(NMDA受容体antagonistとして知られるMK-801を0.2mg/kgで1日1回腹腔内投与)に対して、PPAR alpha賦活剤(脂質代謝異常の治療薬として臨床で使用されているPPAR alpha agonistでこれまで試していなかった薬物)を経口投与したところ、PPAR alpha賦活剤投与群では、薬剤生統合失調症モデルマウスで見られる樹状突起スパイン形態の異常(スパイン密度の低下、成熟スパインの減少、未熟スパインの増加)が改善することを見出した。また、PPAR alpha賦活剤投与群では、薬剤生統合失調症モデルマウスで見られた行動表現型(Novel object recognition testで見られる認知機能の障害)が改善することを見出した。以上をまとめると、本研究により、PPAR alphaの機能不全が統合失調症の病態形成に関与すること、PPAR alphaが統合失調症の治療のための新しい分子標的となり得る可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、PPAR ahphaが統合失調症の治療標的として有用であることを示した。特に、統合失調症様の行動表現型の改善に役立つことを示したことは、大きな成果である。よって、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、モデル動物を用いて細胞種特異的にPPAR alpha のターゲット遺伝子の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、実験に支障が生じた。そのため、計画の一部を次年度に実施する必要が生じた。 次年度は、主に細胞種特異的な遺伝子発現解析に支出する。
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