研究実績の概要 |
<研究の背景> 統合失調症は代表的な精神疾患の一つであるが、その病態生理に関しては不明な点が多い。研究代表者らは、本研究において統合失調症の中に「核内受容体PPAR(peroxisome proliferator-activated receptor) alphaの機能不全が示唆される群」が存在する可能性を示した(Wada, Maekawa et al., 2020)。また、PPAR alphaの機能低下がシナプス形態異常に関わる可能性を示した。 <研究の目的> 今年度は、昨年度に引き続き、PPAR alphaが統合失調症の予防効果を発揮する可能性について、薬理学的統合失調症モデルマウスを用いて解析した。 <令和4年度の研究実績> 6週齢のC57BL6/Jマウスに対して、PPAR alpha賦活剤(脂質代謝異常の治療薬として臨床で使用されているPPAR alpha agonistでこれまで試していなかった薬物)あるいは溶媒を1週間事前投与した。次に、NMDA受容体antagonistとして知られるMK-801を0.2mg/kgで1日1回腹腔内投与した(対照として生理食塩水を投与した)。PPAR alpha賦活剤事前投与群では、MK-801投与マウスで見られる樹状突起スパイン形態の異常(スパイン密度の低下)が改善することを見出した。また、PPAR alpha賦活剤投与群では、薬剤生統合失調症モデルマウスで見られた行動表現型(Novel object recognition testで見られる認知機能の障害)が改善することを見出した。以上をまとめると、本研究により、PPAR alphaの機能不全が統合失調症の予防に有用である可能性を示した。
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