東京都立松沢病院常勤医師の宮野康寛氏(新潟大学大学院生兼務)の協力を得て、同院外来の初診・救急外来受診患者のカルテ調査を定期的に実施し、当該研究のFirst episode psychosis(FEP)のリクルート基準を満たす患者を抽出した。主治医の承諾が得られ、なおかつ対象患者にアプローチができる場合には、書面にてICを得たうえで検体収集を実施した。本年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う諸般の事情により、昨年度に引き続き検体収集が困難な状況下に置かれた。最終的に、統合失調症群、FEP群、健常者群での検体数は、62名、20名、31名となった。各群間における背景項目を検討した結果、統合失調症群および健常者群と比較して、FEP群では年齢が有意に低く、糖代謝の指標や腎機能が、良好な値を示したことが明らかになった。終末糖化産物(Advanced glycation end products; AGEs)は血液およびFingertip(指尖; AGEsセンサ)を使用して計測を実施したところ、指尖AGEs(Fingertip AGEs; F-AGEs)はFEP群で、健常群と比較して有意に上昇していた。一方で、代表的なAGEsであるペントシジンの血漿濃度はFEPと健常者では有意な差はなかった。以上の傾向は昨年度から変化を認めなかった。なお、ビタミンB6値は、FEP群で健常者と統合失調症群の中間に位置していた。また抗精神病薬量(Chlorpromazine換算の一日量)はFEP群で、統合失調症群の半分以下であった。以上から、F-AGEsはFEP群であっても健常者より有意に高いこと、が明らかにされた。
|