研究課題/領域番号 |
18K07584
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
天野 大樹 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (00591950)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 養育 / 攻撃 / 内側視索前野 / 扁桃体海馬野 / シナプス |
研究実績の概要 |
これまでに交尾および妊娠雌との同居経験を持つ雄マウス(father in gestation experience; FGE)を用いた検討を行ってきた。その結果、逆行性にCreを発現させるウイルスベクターであるrAAV2-Creを用いて標識した内側視索前野投射型扁桃体海馬野細胞の活性化により仔マウスに対する攻撃行動が促進されることが示唆された。前年度の研究に引き続き、本年度は扁桃体海馬野の機能について以下の解析を行った。 (1)仔マウスとの同居経験がある父親マウスはその殆どが養育行動を示す。父親マウスの扁桃体海馬野細胞をDREAD法により活性化をした時の仔マウスに対する行動パターンを調べた。その結果、約40%のマウスで仔マウスへの攻撃が見られたが、仔マウスとの接触日数を経るごとに攻撃行動を示すマウスの割合は低下した。 (2)交尾未経験マウスはその殆どが仔マウスに対して攻撃行動を示す。そこで扁桃体海馬野細胞を抑制したところ、仔マウスに対する攻撃行動の有意な抑制は認められなかった。 (3)扁桃体海馬野は内側視索前野に対して主にグルタミン酸作動性シナプスを投射していることが、光感受性イオンチャネル・チャネルロドプシンと電気生理学的手法を用いた実験から明らかとなった。 (4)宮道和成チームリーダー(理化学研究所)との共同研究により改変狂犬病ウイルスを用いて内側視索前野投射型扁桃体海馬野細胞が受けるシナプス入力元を調べた。その結果、外側視床下部、後部扁桃体皮質核、視床などの領域が内側視索前野投射型扁桃体海馬野へ入力していた。さらに扁桃体海馬野内のオキシトシン受容体陽性GABA作動性神経からも投射を受けていることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き扁桃体海馬野の生理機能や解剖学的特性について新たなモデルやツールを使った検討を行い、上記知見を得ることが出来た。更なる詳細な検討に向け、データの蓄積やツールの準備を進めている。以上より本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
扁桃体海馬野から養育行動に重要な内側視索前野への投射シナプスは主にグルタミン酸作動性シナプスであったが、扁桃体海馬野の活性化によって仔マウスに対する攻撃行動が起こるという意外な結果が父親マウスでも得られている。内側視索前野投射型扁桃体海馬野細胞の側副枝や扁桃体海馬野細胞種のさらなる分類を行うことで詳細なメカニズムを調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
論文掲載料を計上していたが、査読への対応に時間がかかったことにより支払いが2020年度となった。
|