研究実績の概要 |
本研究では、統合失調症の早期段階における神経オシレーションの変化と症状や認知機能との関連を調べるとともに、小児期から思春期における神経オシレーションの発達過程を調べる。両者を対比することで、統合失調症の予防や早期支援に有用な指標を見出すことを目的とする。 統合失調症の早期段階にある者を対象に脳波を用いて聴性定常反応(Auditory Steady-State Response: ASSR)を調べる研究では、平成30年度に以下のような結果を得た。発症後早期の統合失調症患者でASSRが低下しており、ASSRの低下は1~2年後の全般的な重症度を予測した(Koshiyama et al., Clin Neurophysiol, 2018)。統合失調症患者におけるASSRの低下は、N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体機能を反映すると考えられているミスマッチ陰性電位(mismatch negativity: MMN)の低下と相関した(Koshiyama et al., Transl Psychiatry, 2018)。令和元年度ではさらに以下のような結果を得た。統合失調症患者ではASSRが低下しており、ASSRの低下はDセリンの相対的な血中濃度と相関した(Koshiyama et al., Schizophr Res, 2019)。また、ASSRと関連する脳波指標であるMMNについて、早期精神病における重要性を解説した総説を発表した(Tada et al., Int J Psychophysiol, 2019)。 小児期から思春期にある者を対象にASSRを調べる研究は現在進行中でデータ収集するとともに一部を解析しているところである。令和元年度はプロトコールを発表した(Okada et al., Psychiatry Clin Neurosci, 2019)。
|