研究実績の概要 |
本研究は、双極性障害の発症機序を解明するために、CACNA1CとTRPC3の相互作用におけるSNP rs1006737の役割を同定し、ストレスシグナル伝達破綻に関わるカルシウムチャネルの役割を詳細に検討することを目的としている。本年度は、前年度までの研究成果を踏まえながら、以下の研究を行った。
① ヒトグリオーマ細胞株(YKG-1細胞)に、1mM LiClを投与し、0、1、3、7日後に、酸化ストレス(0.6mM H2O2, 18h)を行い、CACNA1C、TRPC3、GSK3β mRNAの発現をリアルタイムRT-PCR法で定量的に測定した。酸化ストレスにより、各mRNAともに発現量は増加傾向を認めたが、LiClを7日間投与した細胞群では、3つの遺伝子ともにそのmRNAの発現量は酸化ストレスを負荷しなかった群に比べて統計学的な有意差を認めなかった。 ② 昨年度、CRISPR-Cas9を用いたゲノム編集法によりCACNA1C SNP rs1006737AA置換細胞株(GG⇒AA)を樹立化した。本年度は、同細胞株におけるCACNA1C、TRPC3、GSK3βの発現をリアルタイムRT-PCR法で定量的に測定した。その結果、CACNA1C、TRPC3、GSK3β mRNAの発現は上昇していた。 ③ CACNA1C SNP rs1006737AAの機能解析として、LiCl(1 mM、0, 1, 3, 7日間)投与した後、H2O2投与による細胞内Ca2+動態(Fluo4 AMによる)および細胞膜電位の変化(DiBAC4(3)による)を測定したところ、YKG-1置換(-)細胞株に比べて、細胞内Ca2+の流入量の上昇および膜電位の変化を認めたが、LiClを7日間投与した細胞群では両者ともに統計学的有意差を認めなかった。
|