研究課題/領域番号 |
18K07595
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
布村 明彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (60241436)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 加齢脳 / アルツハイマー病 / 治療抵抗性うつ病 / REST / 酸化ストレス / 神経変性 / 血中バイオマーカー / 免疫組織化学 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)患者、軽度認知障害(MCI)患者および対照高齢者の死後脳サンプルを用いて、中性ホルマリン固定パラフィン包埋脳組織切片上で免疫組織化学的にrepressor element 1silencing transcription factor (REST)の発現を検討した。クエン酸緩衝液中でマイクロウェーブ照射による抗原賦活を施し、ウサギ・ポリクローナルREST抗体(Bethyl社, IHC-00141, 1:100)を用いてPAP法によって免疫染色を行った。その結果、AD患者、MCI患者および対照高齢者の海馬および側頭葉皮質の神経細胞において、核内および細胞質内にRESTの免疫反応が認められた。AD患者およびMCI患者の神経細胞では、対照高齢者の神経細胞に比べて神経保護的転写調節因子であるRESTの核内の発現が低下している傾向が認められた。今後の課題として、REST免疫反応を半定量的に解析し、AD病理とREST発現との関連性、酸化ストレスマーカーとREST発現との関連性、REST発現レベルと生前の認知機能との関連性などを検討する計画である。 他方、対照高齢者、うつ病高齢者(MCIを伴う、あるいは伴わない)および認知症患者の血漿サンプルに関する検討は、研究代表者の所属異動(山梨大学医学部から東京慈恵会医科大学)や新型コロナウイルス感染拡大状況があり、当初の計画通りに患者臨床データに連動させた血中バイオマーカーの解析を進行させることが困難であった。現在の所属先において研究環境を調整し、「治療抵抗性うつ病の病態と脳内βアミロイドの関係:血漿中微量βアミロイド濃度測定による探索的研究」として学内研究体制を確立した。その結果、うつ病関連MCIでは治療反応性と連動した血漿中RESTの増加が認められ、今後さらに各群のデータ集積と解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属研究機関が、平成30年9月1日に山梨大学医学部から東京慈恵会医科大学に変更された状況、ならびに令和2年春以降の新型コロナウイルス感染拡大状況があり、当初の計画通りに患者臨床データ(認知機能、脳画像)に連動させた血中バイオマーカーの解析を円滑に進行させることが困難であった。現在の所属先である東京慈恵会医科大学精神医学講座において研究環境を調整し、「治療抵抗性うつ病の病態と脳内βアミロイドの関係:血漿中微量βアミロイド濃度測定による探索的研究」として学内研究体制を確立した。また、ELISA法に用いる測定機器や専用冷凍・冷蔵庫も学内の講座専用ラボスペースにおいて整備し、測定技術向上の対応も行っている。現在、追加のサンプル集積と並行して解析を進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
今回、1年間の研究期間延長を計画し、申請・受理された。死後脳組織学的検討では、REST免疫反応の半定量的な解析、AD病理とREST発現との関連性、酸化ストレスマーカーとREST発現との関連性、REST発現レベルと生前の認知機能との関連性などを検討する。血中バイオマーカーの検討では、今後すみやかに追加の患者サンプルの集積を進め、血漿中βアミロイドやREST濃度のELISA測定を行い、脳画像や認知機能などの臨床パラメータとの相関などに関する統計解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大状況があり、入院患者の制限や外来受診患者数の減少を反映して見込まれていた患者血液材料等の集積が予定数に達しなかったため、解析に要する試薬の費用を翌年に繰り越し、延長申請の上で研究を継続する必要性が生じたため。
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