研究課題/領域番号 |
18K07597
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉原 玄一 京都大学, 医学研究科, 助教 (70402261)
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研究分担者 |
大石 直也 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (40526878)
山下 祐一 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 室長 (40584131)
孫 樹洛 京都大学, 医学研究科, 研究員 (60771524)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳画像 |
研究実績の概要 |
統合失調症などの精神障害の病態解明に脳画像技術が援用されているが、その病態は十分に解明されていない。その要因の一つに、精神障害の背景にある病態が均一でないことが挙げられる。こうした異種性を持つ疾患の病態解明には、より大きなサンプルサイズが必要となり、多施設によるデータ収集が不可欠となる。一方、多施設データセットには施設間差が含まれており、その影響は大きい。本研究では、多施設で収集された統合失調症脳画像データの施設間差を除去し、脳画像における精神疾患の特徴そのものを抽出し、さらに、異種性を考慮に入れた解析を行うシステムを構築することを目的とした。 本目的を達成するため、京都大学および他施設における複数の機種で撮像した構造MRI画像を解析した。サンプルは統合失調症患者合計289名、健常対象者合計754名を用いた。構造MRI画像はFreeSurferで前処理し、得られた68の脳領域の皮質厚を用いた。 これを施設間差を補正せずに解析したところ、当初の予想通り、施設間および機種間の影響は著しく強く、患者ー被験者間の差(すなわち、疾患の影響)より大きいことが示された。 これを機械学習で除去する試みを行ったが、学習が収束しなかった。サンプル数が少ないためと考えられた。 また、一般に公開されている施設間差を除去するプログラムを用いて補正し解析したところ、施設間差がうまく除去されることが示唆された。この補正されたデータをもとに統合失調症患者の脳画像の特徴を層別化したところ、側頭葉内側、前頭葉および全脳の皮質厚に駆動される8つのクラスターが見つかった。これらの一部には抗精神病薬内服量が関係していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で他施設および複数の機種により撮像されたデータを収集している。これに対し前処理したデータを用い、複数の解析を試みている。そのうちの1つは目的とする施設間差を除去することに成功しているように考えられる。また、施設間差を補正したデータを用いた解析では臨床的に意義のある特徴をうまく抽出できることが示唆された。このように本研究は概ね順調に進展していると考えている、。
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今後の研究の推進方策 |
今後はサンプルサイズを増やし、これまで同様の解析を行い、今まで得られている結果の妥当性を検証する。また、異なる施設間差の補正法を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予定通し支出したが、予定より安価であった物品もあったため、216円を繰り越した。
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