研究課題
統合失調症の病態に免疫学的な機序が関わることがこれまでの遺伝子解析や疫学研究で示唆されている。脳腸間の情報伝達において重要な役割を担っている腸内細菌叢は、宿主免疫系を制御することで様々な生理機能や病態形成に関わっている。これまでの研究で、腸内細菌叢は脳の発達や機能に関与することが示唆され、宿主の行動特性に変化をもたらすこと、宿主のストレスで変化することが示され、統合失調症の病態に腸内細菌叢が関与している可能性が推測される。近年の次世代シーケンサーの発達により腸内細菌叢の詳細な解析が可能になっており、本研究では、日本人統合失調症患者を対象として、次世代シーケンサーによる腸内細菌叢の詳細な解析を行い、統合失調症の病態解明の手掛かりを得ることを目的とする。解析の対象は、岡山大学病院精神科神経科を受診した外来または入院患者で、DSM-5及ICD-10を用いて統合失調症と診断された18歳~65歳までの患者と年齢、性を一致させた健常対照者で、研究の趣旨を説明し同意の得られた対象者から糞便採取を行う。統合失調症患者の臨床症状や重症度、認知機能との関連も検討する。検討に用いる評価尺度である陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、全般的機能評価尺度(GAF)、臨床的全般改善度(CGI)、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)、Wisconsin Card Sorted Test、前頭葉機能検査(FAB)、Japanese Adult Reading Test 、Wecheler Adult Intelligence Scale -Reviced (WAIS-R)等を統合失調症患者に施行した。
3: やや遅れている
解析方法の検討を新たに行い対象となる統合失調症患者の診察、臨床評価、試料採取を行っているが、COVID-19対策のため、試料の採取が中断している状態である。事態が収束するのを待ち、解析必要数が揃い次第解析を行う予定としている。
岡山大学病院精神科神経科を受診した外来または入院患者で、DSM-5及びICD-10を用いて統合失調症と診断された18歳~65歳までの患者と年齢、性を一致させた健常対照者で、研究の趣旨を説明し同意の得られた対象者から糞便採取を行う。糞便は採取後すぐに-80℃で凍結保存したのち溶菌操作により細菌叢DNAを抽出する。次年度中には統合失調症患者50サンプル、健常対照群50サンプルを対象にメタゲノム解析を行い、統合失調症患者と健常対照者での腸内細菌叢の相違点を同定する。次の解析として、腸内細菌叢に影響を及ぼす様々な要因と腸内細菌叢の関連についての検討も行う。
COVID-19の影響で試料の採取が完了しておらず、解析が次年度に持ち越しとなったため、次年度使用額が生じたが、採取が完了し次第すみやかに解析を進めていく予定。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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