研究課題
統合失調症の病態に免疫学的な機序が関わることがこれまでの遺伝子解析や疫学研究で示唆されている。脳腸間の情報伝達において重要な役割を担っている腸内細菌叢は、宿主免疫系を制御することで様々な生理機能や病態形成に関わっている。これまでの研究で、腸内細菌叢は脳の発達や機能に関与することが示唆され、宿主の行動特性に変化をもたらすこと、宿主のストレスで変化することが示され、統合失調症の病態に腸内細菌叢が関与している可能性が推測される。近年、腸内細菌叢の詳細な解析が可能になっており、本研究では日本人統合失調症患者を対象として、腸内細菌叢の詳細な解析を行い、統合失調症の病態解明の手掛かりを得ることを目的とした。解析の対象は、精神科病院に入院中のDSM-5及びICD-10を用いて統合失調症と診断された18歳~65歳までの患者と、年齢、性を一致させた健常対照者で、研究の趣旨を説明し同意の得られた対象者からMGキット(Nomaguchi et al. 2023)を用いて採便した。続いて、得られた糞便を16S rRNA菌叢解析により腸内細菌の種類や構成を網羅的に解析した。統合失調症患者の臨床症状や重症度、認知機能との関連も検討するため、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、全般的機能評価尺度(GAF)、臨床的全般改善度(CGI)、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)を統合失調症患者に施行した。統合失調症患者30名と健常対照者30名で解析を行ったが、腸内細菌叢に大きな違いは見られなかった。今後、代謝物質の解析等、多方面からの検討を継続する予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Psychopharmacology
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