研究課題
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders: ASD)は、現在有病率が1~2%と以前に比べて高い頻度を示し、専門医療機関への受診も増加しており、社会的に関心が高い疾患である。多くの研究が行われているが、その病因及び病態については解明されていない。ASD患者では中枢神経系においてミクログリアの活性化など免疫系の異常が多く報告されている。また同時に、末梢組織においても気管支ぜん息などアレルギー疾患の罹患率が高いことも知られており、全身性に免疫系の異常が想定される。我々はこれまでに、ASDモデルマウスで、ミクログリア由来の炎症性サイトカインが増大していることを報告し、また、ASD患者の末梢血単核球(PBMC)において、炎症性サイトカインとASD症状の一つである社会性の障害が有意に相関することを報告してきた。PBMCから分化するマクロファージはM1/M2極性に分類されるが、近年、M2マクロファージの機能不全がアレルギーやメタボリックシンドロームなどの病態に関連していると報告されており、本研究では、ASD患者のM2マクロファージの機能不全について着目している。ASD患者のM1およびM2マクロファージの炎症性サイトカイン等について検討しASDの病態について検討した。結果、ASD群においてM1マクロファージにおけるTNF-α (tumor necrosis factor-α)発現およびTNF-αのM1/M2マクロファージにおける発現比が健常群に比べて有意に高いことを示し、これらは、成人の高機能ASDの診断ツールになり得る可能性について報告した(Autism Res. 2021(11): 2330-2341. doi: 10.1002/aur.2585.)。
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Autism Research
巻: 14 ページ: 2330~2341
10.1002/aur.2585