今後の研究の推進方策 |
[1] Kirrel3欠損マウスにADHD治療薬(メタンフェタミン)を投与した結果、メタンフェタミン非投与群と比べて多動の有意な亢進が認められた。このことから、ADHDの病態とは異なり、ドーパミン伝達系が亢進している可能性が考えられるため、双極性障害の躁症状治療薬(リチウム)やドーパミン受容体拮抗薬を腹腔内投与し、ADHDを伴うASD様行動異常の改善を検討する。また、活動依存的に発現するc-fosの発現レベルや局在の変化を免疫染色法を用いて検討することにより、ADHDを伴うASD様行動異常の原因となっている脳部位や神経細胞を明らかにする。 [2]発達過程や成獣の野生型、及びKirrel3欠損マウスの前頭前皮質、視床、小脳、中脳、線条体等のセロトニン濃度やドーパミン濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した結果、線条体等に異常を見いだしており、さらに個体数を増やして検討する。 [3]発達過程や成獣におけるKirrel3欠損マウスの大脳基底核系、大脳辺縁系のドーパミン伝達系と小脳シナプス部構造異常との関連性を中心に、ドーパミン代謝酵素(TH)、ドーパミントランスポーター(DAT)、ドーパミン受容体(D1R, D2R, D3R等)やシナプス足場蛋白(PSD95, Veli1/2/3等) の発現レベルや局在の変化の有無を組織学的(免疫染色法)・生化学的(ウェスタンブロット法)・分子生物学的(リアルタイムPCR法)に検討する。また、ドーパミン伝達系の制御に関連するグルタミン酸やGABAのシナプス伝達回路の異常の有無を検討するために、グルタミン酸やGABAのレセプター(NR1, GluR2/3, GABAAR等)やシナプス足場蛋白(VGAT, VGLUT1,VGLU2等)の発現レベルや局在の変化の有無を組織学的・生化学的・分子生物学的に検討する。
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