研究課題
我々は、発達早期の腸内細菌叢がストレス反応だけでなく、宿主の精神活動や行動に影響を及ぼすと考え、無菌マウスを用いて行動解析を行い、無菌マウスは、常在菌叢マウスと比べ、活動性と不安症状が高まることを解明した。多動性や不安症状は、神経発達症に特徴的な所見であることから、我々は、発達早期の腸内細菌叢が神経発達症の行動特性に影響を及ぼすという仮説を立てた。本研究は、神経発達症の行動特性である攻撃性・衝動性や社会性への腸内細菌叢の影響につき、無菌マウスを用いた行動解析によって解明することを目的とし、攻撃性について一定の成果を得た。方法は、BALB/cマウスを使用し、無菌(GF)マウス群と無菌マウスに常在腸内細菌叢を投与した(Ex-GF)マウスの群の2群に分類し、各群のマウスをアイソレーター内で飼育・繁殖し、2世代目のマウスを作出した。8週齢の去勢マウスと非去勢マウスを汚染されていない環境で10分間対峙させ、攻撃性試験を実施した。腸内細菌叢に関連した攻撃行動を評価するために、0、6、10週齢のGFマウスの仔マウスに希釈したEx-GFマウスの糞を経口投与した。結果は、GFマウスはEx-GFマウスに比べ、より攻撃的な行動を示した。さらに、0週齢でEx-GF群の糞便を投与されたGFマウスは、GFマウスよりも攻撃性が低下していた。これらのことから、発生初期の腸内細菌叢が攻撃性に影響を及ぼしている可能性が示唆された。攻撃性について得られた以上の結果については、昨年度論文として公表した。一方社会性については、無菌環境のアイソレーター内で社会性を観察する装置を開発した。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Neuroscience Research
巻: 168 ページ: 95-99
10.1016/j.neures.2021.01.005.