研究課題/領域番号 |
18K07621
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松浦 妙子 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90590266)
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研究分担者 |
平山 嵩祐 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (00769177) [辞退]
安井 博宣 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (10570228)
高尾 聖心 北海道大学, 大学病院, 助教 (10614216)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 陽子線生物モデル / 亜致死損傷回復 |
研究実績の概要 |
当初の研究実施計画に従い、スキャニング陽子線照射をはじめとする、「異なるLETを持った陽子線に対する間歇照射」に適応した時間依存LQモデルの構築を完了させた。これは、ZaiderとRossiが提案したtheory of dual radiation action (TDRA)を、多重LET、および多重分割照射に対応させたものであり、過去に線量率低下が治療効果に与える影響を評価した研究で用いられてきたMKMモデルと比較して、(1)細胞の亜致死損傷からの回復関数を自由に取り入れられる(2)β項がLETに依存する場合にも問題なくモデル化できるといった特徴がある。このモデルを用いて、まずは複数門数の散乱法を模擬した陽子線照射シミュレーションを実施し、瞬間照射と比較してどれほどの生物線量低下が見られるかの評価を行った。その結果、検討したパラメータを用いると、治療が10分長引くにつれて1.2-3%程度の低下が起こることが分かった。平行して、昨年度に引き続き、亜致死損傷回復関数およびそのLET依存性を決定するための細胞照射実験を行った。昨年度は2種類のLET(0.74 keV/μmと10.2 keV/μm)に対して照射を完了させたが、本年度はさらに中間2種類のLETに対しても実験を実施した。しかし、現在のところ、まだ統計精度が不十分であり、LETに対する系統的な傾向を捉えるには至っていない。一方で、最近の研究によると、LET増加伴って損傷回復時間が長引くことが示唆されている。来年度は、引き続き照射実験を実施し、治療効果評価システムに用いる回復関数を決定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画に記載の内容をおよそスケジュール通り実施しているが、予定よりも多くの細胞照射実験が必要となり、時間を要している
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、今年度に構築した時間依存LQモデルをスキャニング照射に適用させ、実際の患者の実績照射ログを用いた治療効果の評価を行う。本年度に引き続き、亜致死損傷回復関数およびそのLET依存性を決定するための細胞照射実験を行い、得られた関数を、治療効果評価システムに搭載させる。最後に、照射法や装置パラメータのうち、どこを改善すれば、治療計画時に期待される治療効果が得られるかについての検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度成果発表を予定していた国際学会への参加を諸事情により見送ったため、翌年度に参加し成果発表する予定である。また、陽子線治療装置を用いた細胞照射実験を今年度予定していたが、装置の空き状況が思わしくなく、一部は来年度に実施することにした。
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