RIG-I様受容体 (RLR) は細胞質のウイルスセンサーとして機能し,ミトコンドリアを介して抗ウイルス応答を誘導する。また,近年では,RLRの活性化による抗癌効果も報告され,RLRが癌治療の標的として期待されている。申請者はこれまでにRLR刺激因子の抗癌効果が放射線との併用により増強されること,またRLR刺激因子により放射線誘発アポトーシスが増強されることを見出したが,そのメカニズムについては未解明である。本研究の目的は,そのメカニズムを解明するとともに,RLR活性化と放射線の併用による抗癌効果をより効果的にするための治療戦略を見出すことである。 2年目までに,ヒト肺癌細胞細胞に対するRLR活性化と放射線の併用による抗癌効果をより効果的にするための治療戦略として,RLR刺激因子と放射線の併用処理に加えて,アポトーシス誘導因子Fasリガンド併用の有用性を明らかにし,国際学術誌『Current Cancer Drug Targets』に報告した。最終年度は,RLR刺激因子による放射線感受性増強機構の解明に取り組み,以下について見出した。①RLR刺激因子はミトコンドリアリボソームタンパクDAP3のタンパク発現を低下させる,②DAP3発現抑制細胞では放射線感受性が高まる,③RLR刺激因子による放射線致死効果増強はDAP3発現抑制細胞で減弱する。以上の結果より,RLR刺激因子はDAP3のタンパク発現低下を引き起こし,放射線致死効果増強を誘導することが示唆された。この成果は国際学術誌『International Journal of Molecular Sciences』で報告した。
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